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2009年4月13日 (月)

花火の夜の物語 76

 花火の夜の物語 75からつづく
 八木さんが時間を気にしているようなので僕もつられて、壁に掛かっている時計を見上げました。
僕は腕時計をしていなかったのですが、正面に座っている八木さんの背後の壁には、一年前に移動していった副店長が残していった時計がかかっています。

 すでに時刻は22時をまわり、

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 長針は真下を通り過ぎていました。
気づかないうちに、相当な時間がたっていたのです。

 本当は高校生であるK君を、こんなに店に遅くまで引き止めておいてはいけないのですが、夏休みだしいいかと思っていました。

「結局、長い間話してきたけど何も解決せず、K君の気持ちもまぎれず…… 無駄な時間だったかな」

 僕がため息をつくと、K君は首を振りました。
「そんなことないです。今まで何が何だか分からなくて、彼女が何を考えているのか分からなくて…… それでいらいらしてました…… でもそれを誰にも悟られたくなかったから意地を張ってなんでもないような顔をしてたら、引っ込みがつかなくなっっちゃたんです。それがとっても苦しかったんです。つっぱちゃったから誰にも相談できなかったし…… もしかしたら彼女の友達に頼んで取り持ってもらえば何とかなったかもしれないなんて思ったけど、失敗した時の惨めさを考えるとそれもできず。その意気地無さが自分でも嫌になって、さらに落ち込んで」
「K君、それ正解だよ。そんなことしても絶対にうまくいかなかったから。自分から傷つきにいくことはないんだから、それで良かったって」
「おい、何もそんなにはっきり言わなくても」
「おやぁ、その言い方だと店長もそう思っていたんですよね。それって、とどめを刺してませんか?」

 先にとどめを刺したのは君だろうと思いました。
「そんなことはないよ」
「だったら、K君がYさんの友達に仲介を頼む前に店長が相談されていたら、止めませんでしたか?」
「……」
「やっぱり店長でも止めたでしょう?」

 それは、たぶんそうしたと思います。
結局僕も、大筋では八木さんと同意見でした。

 K君は、0.001%ぐらいは、まだチャンスがあるんじゃないかと思っているようですが、それは無いだろうと思いました。

 無駄に傷つくことはないのです。
だったら、突っぱって、意地張って、かっこつけた方がましです。

 77につづく
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