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2009年3月22日 (日)

花火の夜の物語 68

 花火の夜の物語 67からつづく
「自分が恵まれていることに気づいていない?」
「だって信じていますから。自分は普通だと。毎日同じようなことが起これば、それは普通で平凡で退屈でしょう。Yさんは、今日も明日も市場に行けるし、行けば必ずおいしい果物があると思っています。だからあまり迷わないし、決断も早くて、後悔もしない……」
「……」
「つまり、K君は1番目のお店の『リンゴ』で、S君は2番目のお店の『イチゴ』です」

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「いや…… また、それは……」
酷な言い方をするなと僕は思いました。
K君はかわいそうに、視線を八木さんから外しうなだれてしまいました。
やはり彼は、まだ立ち直っていなかったようです。

 八木さんが言いたいことを言い終えて黙ってしまったので、休憩室を沈黙が支配しました。
その静寂に耐えられずに僕は、ささやかな疑問を口にしました。

「しかし現実にいろんな人間を見て、自分と比較すれば分かりそうなものだけれど」
「だから言ったじゃないですか。全てが分かるのは自分のことだけだと。その人が本当に幸せかどうかが分かるのは、全てを知っている本人だけです。同じように、Yさんのことが分かるのは、Yさんだけです。普通の人に比べれば好運でも、いつも起これば普通で平凡です」
「うーん……」
「Yさんは自分には他の人には訪れる、『もっといいこと』が自分には来ない。その代わり、悪いことも起こらないと感じています。つまり平凡で…… だから退屈なんです」

 69につづく
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