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2008年12月 4日 (木)

迷宮のアマゾン 8

7からつづく
「だって、どこに行ったか心配じゃないですか」
「だから、どうして?」
「ただ無くなったんではなくて、誰か他人の手に渡ってしまったかもしれないんですよ。コンビニでの受け渡しミスで、その日アマゾンからの品物を受け取った人に行ったのかも……」
「でも君はちゃんと代わりの品物を受け取ることができたから、それでいいんじゃないの」

 安野君は、違うんですといって手を振ると、声をひそめました。
「あの中には……」
 安野君が言葉を続けないのでしかたなく、僕は訊きました。
「あの中には、何?」

「商品と一緒に、納品書が入っています」
「そりゃ入っているだろうけど。何か問題でも?」

 安野君は「分かっていないな」という表情で僕を見返しました。
「納品書には、僕の名前と住所が書かれてます。コンビニ受取を選択する人は、自宅の近くの店を指定するのが普通だから、受け渡しミスで他人の手に渡るとすれば、その人も恐らく近所の人間のはずです」
「……」
「その人が僕を知っている可能性は低いでしょうけど、少なくとも住所氏名は分かってしまうんですから完全に特定できます。○○町○丁目○番地の安野○○という人間がチャットモンチーのDVDを買ったことが知られちゃいます」
「別にいいじゃないか」
「僕の場合はチャットモンチーのDVDだからいいですけど、コンビニ受取を選ぶ人の中には、他人にあまり知られたくないものを買う人もいるんです。たとえば○○とか、○○○○○とか。それはいやじゃないですか」
「ふーん、そんなものを買うんだ……」
「だからっ、今言っているのは僕のことじゃないですって。一般的な話しです」

 確かに安野君の言うことも分かります。
個人的な趣味趣向を他人に知られることは、あまり気持ちのいいことではありません。
誰だか分からない人間に、自分の情報を握られるのも怖いことですが、自分の近くに住んでいる人間に知られてしまうのは、もっと嫌かもしれません。

「僕の言ってること分かってもらえました?」
「うん、分かったよ。で、普段はどんなものを買ってるの?」

                                                                       FIN
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