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2008年12月14日 (日)

花火の夜の物語 40

花火の夜の物語 39からつづく
「まさか、この期におよんでYさんともう一度、なんて思っていないでしょうね?」
「おい、何言いだすんだ」
僕があわてて八木さんを制しようとしましたが、言ってしまったものはもう手遅れです。

 K君は軽く唇をかみしめていましたが、やがて八木さんの方を真っ直ぐ見つめました。
「そんなことないです。そりゃ最初は何とかしようと思ってましたけど、もうあきらめました。だって……」

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 K君は、イスに右足のかかとを引っかけて両手でその膝を抱え込みました。
「僕は、振られたんじゃないかもしれないです……」
「そっか、そう思ったんだ」
八木さんは、そう言って僕の方を見ると小さくうなづきました。
「僕が振られて、Sさんの方に行ったわけじゃないみたいなんです」
「じゃあ、K君はYさんと……」と言いかけた僕に、八木さんがくさびを打ちました。
「はい、化石時代の人間は口をはさまないで下さい。話が進まないから」

 人を化石時代の人間に例えるとは、あんまりだと思いましたが、コミュニケーションの方法一つとっても僕らの時代とは違いがありすぎます。
ポケベルによって、コミュニケーションに時間と距離の制限が無い新しい形態があらわれ、時が流れポケベルが死滅した現在にも、その血脈は携帯メールとして生き残っています。

「実はあの後、Sさんと話しをしたんです。やっぱり直接話さないと気が済まなかったし、ストレートな方がいいと思ったんです」
「やっぱりそうだったんだ。で、何を話したの?」
何か変です……

「ちょっと待って、八木さんはK君とS君が話しあったことを知っていたの?」
「いやそうじゃないですけど、三人の様子を見ていたら、それしかないと思って」
「じゃあ、あの一件以来、初めて三人が顔を合わせるようなスケジュール変更は無神経だって言ったのは何だったんだ」
「そんなこと言いましたか……」
八木さんは、しらっとして言い放ちました。
「そんな意味のことは、確かに言ったよ」
「まあ、いいじゃないですか。ちょっとドキドキしたでしょ」
八木さんは僕の方にむかって、屈託のない笑顔を見せました。
僕が彼女をにらみつけたのは、言うまでもありません。

 K君は僕と八木さんの会話を聞いていましたが、話が途切れたので口を開きました。

「Sさんは言ったんです。振られたのは僕の方だって……」

 41につづく
 01はこちら

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