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2008年12月12日 (金)

花火の夜の物語 38

花火の夜の物語 37からつづく
 スイングドアの方を見ると八木さんでした。
勢いよく入ってきた八木さんは回りの様子を伺い、休憩室の中の微妙な空気を感じ取ったようです。
そして僕の方に素早くアイコンタクトをしてきました。

 その目は、もう何かあった?と訊いていました。

「八木さん、年末もSさんがヘルプに来てくれることになりましたよ。今みんなで初詣に行こうって話していたんです」
「ふーん、みんなでねぇ…… おっとそんな事を言っている場合じゃなかった。S君、悪いけど早めに入ってくれない? 団体が入っちゃって、ちょっとキッチンが苦しいんだ」
「分かりました、すぐ着替えます」
八木さんの言葉に救われたように、S君はロッカールームに向かいました。

「私もそろそろ着替えようかな」
 Yさんが席を立って次に着る新しいユニフォームをリネン置き場に取りに行き、そのままロッカールームに入っていきました。

 K君は座ったまま八木さんの方をちらりと見て腰を浮かせかけましたが、立ち上がることはしませんでした。
「どうした? K君。着替えないの?」
「あ、いや。新メニューのビデオをもう一回見ておこうかなと思って。店長がテストするって言ってるし」

 K君がすぐに動かないのは、S君と二人っきりで狭いロッカールームに入るのが気まずいからでしょう。
「そりゃ感心だけど、テストなら私がヤマを教えてあげるからだいじょうぶ。かわいい愛弟子のためだもん」
「ほんとですか」
「愛弟子って何だい?」
 僕が横から口をはさむと、八木さんは胸を張りました。
「K君に手取り足取りユニフォームの着方から、オリエンテーションしてあげたのは私ですから」

「そうか。それでK君は八木さんに頭が上がらないんだ……」
 そう言いながらYさんがロッカールームから出てきました。

 39につづく
 01はこちら

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