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2008年12月 6日 (土)

花火の夜の物語 34

 花火の夜の物語 33からつづく
 確かにテストをやる頃には、すでにS君は大学のある町に戻っているはずです。
Yさんは、いきなり核心に触れてきました。
できればそのことには触れたくないと思っていた僕ですが、こうなってはしかたがありません。
「そうか、じゃあS君は向こうの店に戻ってから勉強してよ」

 S君の方を見ると、彼は心なしか元気を無くしたようにうつむき、K君は無表情で目をそらし、

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 Yさんだけがいつもと変わらず笑顔でした。

 微妙なところに、ばさりと切り込んでくるのは、気づいていてわざとやっているのか、それとも天然なのか、僕には判断がつきませんでした。

 しばしの沈黙にYさんが怪訝そうな顔で、手に持っていたエプロンを、くるんと回しました。
「Sさん、学校が始まったら、向こうでは週何回ぐらいシフトに入るんですか? 夏休みはほとんど毎日入ったみたいですけど」
Yさんは自分以外の人間の緊張感に気づく様子もなくS君にたずねました。
「学校に帰ったら実験があるから、週二日ぐらいかな。今も実験はやっているんだけど、夏休みの間は向こうにいる人間に頼んでいるから、帰ったらその分も返さないと……」
「そうですか、大変ですね。理系は……」

 なるほど理系の学部に行くと、そういうこともあるのか。
高校時代に数Ⅲの積分でつまづき文系の大学を選んだ僕としては、自分の道は誤っていなかったと再確認しました。
だいたい三年で文系クラスを選んだのに、うちの高校は変な学校で理系、文系を問わず数Ⅲが必修だったのです。
それが、元もとは理科や数学が大好きなSFファンだった僕から、現代物理学を学ぶ機会を奪ったのです。
(私大文系を目指していた人間は、ぶうぶう言っていました)

 35につづく
 01はこちら

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