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2008年11月20日 (木)

花火の夜の物語 29

 花火の夜の物語 28からつづく
 八木さんの笑顔に追い立てられるようにして、僕は休憩室へと向かいました。

 当然ですが休憩室には誰もおらず、閑散としています。
そしてあと15分もすれば、ここにYさんとK君が上がってきます。

 2人はあの後も話しぐらいはしているようなので、会話が全くないということはないと思います。
しかし、そこに居合わせた僕はいったいどんな素振りをすればいいのでしょうか……
しかも、その後すぐにS君が出勤してきます……

 僕が頭を悩ませていると大学生アルバイトの武田君が、大きなA2判の製図バックを抱えて入ってきました。

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 大学の帰りに寄ったようでした。

「おはようございます、店長。新しいスケジュール出てますか?」

 えらいぞ、武田君よくぞ来てくれた。
これで最悪の状況は避けられる!

「もちろん出てるよ武田君。そこに貼ってあるから」
満面に笑みをたたえた僕を見て、武田君は怪訝そうに首をかしげましたが、すぐに自分の携帯を取り出しました。

 武田君はピッ、ピッ、と音をならして、スケジュールを携帯に打ち込みながら僕に言いました。
「店長、今僕お金がないんで、スケジュールどんどん突っ込んでくれてかまわないですから。何なら週6でもいいです」

 僕がそれに対して答える前に、武田君は携帯をパタンと音を立てて閉じると、テーブルの上に置いていた製図バッグを肩にかけました。

「それじゃあ店長、失礼します。スケジュールの件、よろしくお願いします」
「ちょっ、ちょっと待って。もう帰るのかい」

 せっかく捕まえた獲物に逃げられてはかなわないと、僕はあせりました。
しかし武田君は平然と、僕の方を見てうなずきました。、
「ええ、今日はスケジュールを見に来ただけですから」
「そんなこと言わずに、もう少しいれば?」
「ええ、でも八木さんが……」
「八木さんが、何?」
「用が終わったら、さっさと帰ってきたほうがいいって言っていたんで…… なんだか分からないですけど」

 おのれ、図ったな八木響子!
あくまで僕1人で対処しろっていうことか……

 30につづく
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