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2008年11月 1日 (土)

花火の夜の物語 22

花火の夜の物語 21からつづく
 花火大会の日にYさんとS君が仲むつまじく、腕を組んで歩いていたという話しは、一緒に行った高校生たちの口によって、店中に広まりました。

 当然K君の耳にも入っているはずです。

 水曜日のことです。
駐車場に出て、店の外観のチェックをしていると、

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 店のジャンパーを引っかけて八木さんが走り寄ってきました。
「店長、営業部長から電話が入りましたけど、今駐車場に出ているって言ったら、またかけ直すと伝えてくれと言われました」
「他に何か言ってた?」
「いつものことです……」

 八木さんは営業部長の大のお気に入りで、以前から副店長になるように勧められているのです。
部長には、一年後ぐらいに契約社員の「店長」として店を任せたいという心積もりがあります。
いろいろな理由があり、八木さんはその話を断っています。
僕が、「またあのことか」という顔をすると、八木さんは両肩をすくめてみせました。

「ところで店長、聞いていますか?」
「何を? それだけで、何のことか分かったら気持ちが悪いだろう」
「そうですか……」
僕が自分の店の従業員の中で唯一、「かなわないな」と思うことがある人間です。

「Yさんのこと?」
八木さんは、やっぱり分かっているくせにという顔して、少しあごを引いて上目遣いになりました。
「店長はどういうふうに聞いているんですか・」
「YさんとS君が花火大会の日に、仲良く腕を組んで歩いていたって聞いている」
「それだけ?」
「そうだよ」
「仲良く腕を組んで歩いていたっていうのは、半分正しいけど、半分は間違っていますよ」
「どういうことかな」

 男にとって、女の子に腕を取られることは、かなり強力な攻撃になります。
花火の夜に、二の腕にぶら下がって体重を預けられれば、心穏やかではいられないでしょう。
ましてや、それがYさんであれば……

 そんな事を考えている僕の頭の中を見透かすような視線で、八木さんは言いました。

「Yさんと、S君。別れましたよ」

 23につづく
 01はこちら

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