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2008年11月18日 (火)

迷宮のアマゾン 2

 1からつづく
「大変申し訳ありません、お客さま。今品物を探していますので、もう少しお待ち下さい」
「探しているって、どういうこと?」
安野くんはあきれて訊きました。

 オーナーは苦しそうに頭髪が少なくなった頭をかきながら言ったそうです。
「実は、商品が見あたらなくて…… 昨日ほんとうに店に届いているかどうか受け取った高校生に確認しているんですが、今授業中らしくて携帯がつながらなくて……」

 安野くんはちらりと時計を見ましたが、すでに5時を回っていました。
「授業中?」
「あっ、彼は定時制なんです。ですから授業が終わるまで、つながらないかもしれません。申し訳ありません」

 電話に出れなくてもメールを出せばいいんじゃないのかと、安野くんは思ったそうです。
しかしオーナーはそんな事には考えが及ばないようでした。
横にいた女の子が「私、メールを送ってみます」と言って、再びバックに消えました。

「店に届いたかどうかも分からないんですか?」
「いや、伝票上は届いているはずなんですが……」
「検品はしますよね?」
「はい、もちろんそれは」
「だったら店内にあるんじゃないですか?」
「そうなんですが、いくら探しても見つからなくて…… 何か手違いがあったかもしれないんです」
「アマゾンの方に確認は?」
「それが、電話の連絡先が無いのですぐには確認できないんです」
「問い合わせ先がないんですか?」

 最近は電話での連絡先を公表していなかったり、わざと分かりにくい深いリンク先にひっそりと記載していたりするところが多いですが、ビジネス上の連絡も同じなのかと安野くんはびっくりしたそうです。

 ひょっとしたら単にそのオーナーが連絡先を探せなかっただけかもしれません。
しかし、そのときの安野くんにとっては、どっちでも同じことです。

 そのとき携帯を片手にした女の子が戻ってきました。
「オーナー、○○くんからメールが来ました」
オーナーの顔が安心したようにゆるみました。
「よかった、何だって?」
「それが、よく覚えていないそうです。でもスタンプが押してあるなら受け取ったんだろうって。その場で確認はするけど、何がいくつ届いたかなんて覚えていないそうです」
「まっ、そりゃそうでしょうね。わかるはずないですよ」
安野くんはつぶやきました。

 アマゾンの商品は箱に入って店に届き、そのままお客さんに手渡すのですから、見かけは全部同じです。
安野くんの商品が届いたかどうかなって、アルバイト君に分かるはずもありません。

「せめて個数だけでも分からないかな? それが分かれば手渡し済みの伝票をカウントすれば、店に届いてから無くなったのかどうかが分かるんだけど」
「訊いてみます」
再びアルバイトの女の子はバックに消えました。
初めてまともなことを言ったなと、安野くんは思ったそうです。

 その後もオーナーとアルバイトの男の子はレジの回りを探していましたが、そもそも彼らにもどんなものを探せばいいのか分かっていないのです。
アマゾンでよく買い物をする人は分かると思いますが、まったく同じ商品でも梱包の大きさはそのときによってまちまちです。
小さい商品にばかでかい箱で送ってくることもあります。

 ついにしびれを切らした安野くんは言いました。
「店内に品物があるのかどうかだけでもはっきりして下さい。あるのなら見つかるまで待ちます。もう30分もたっているんですよ。店内にある可能性が無いならこれ以上待ってもしかたがないです」

 1はこちら
 3につづく

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