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2008年3月25日 (火)

モノレールの漂泊者 PART 19

 PART 1はこちらです
「いや、そんな期待されても困るよ。くわしい話しを聞いたわけじゃないんだから」
僕が予防線を張ると、二人はそれでもいいと言って話の先を促しました。

 実際たいしたことを聞いたわけではなかったのです。
あの事件の2日後のことでした。
あの時のお巡りさんが店に、

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 やって来ました。
少しだけ聞きたいことがあるということでした。
質問の内容は、店にいる間に誰かと会わなかったかということと、ほんとうに一度も店を出なかったのかということでした。

 どちらも即答できる質問ではありません。
なぜなら彼女をずっと見続けた人間はいないからです。
しかし、これまで従業員から聞いている話ではあのお客さんは一週間の間、一歩も店から出てはいないということでした。

 3日目ぐらいからは、すでにそのお客さんのことは店中に知れ渡っており、その行動は常に誰かが見ていたはずです。
初期の頃は無銭飲食ではないかと疑われていたので、油断すれば店を勝手に出て行くのではないかというおそれもありました。
シフトの責任者はそれなりに、注意を払っていました。
ですから、僕はあの人が店を出たようなことはなかったはずだと伝えました。

 そう言うとお巡りさんは小さくうなずき、では店内で誰かと会っていたようなことはないかと質問しました。

 これの方は最初の質問からすれば少し曖昧な点もあります。
入店時には他のお客さんと何も変わりはなかったわけで。特に誰も注目はしていなかったからです。
その時に誰かと会っていれば、もしかすると誰の記憶からも抜け落ちている可能性はあります。

 僕は一つ思いついたことがあって、お巡りさんに「少し待って下さい」と言い置いて、事務室のコンピュータに向かいました。

 あのお客さんが店にいた一週間の間、あのテーブルにはあのお客さんしか座っていません。
とすればその間にあのテーブル番号で発行された伝票はすべて、あのお客さんのものということになります。
僕は時間とテーブル番号で絞り込みをかけて、伝票を検索しました。

 出てきた伝票は15枚でした。
僕はその伝票をざっと検証してみました。
伝票には客数が入っていますが、それはすべて1名様になっていました。

 伝票に入ったメニューの内容からしても二人分のものと思われるものはありませんでした。
僕たちは常に客席に注意していますから、新しいお客さんが席に着けば必ず注文を伺いに行きます。
数分で出て行かれるような場合を除き、基本的には何かオーダーしていただくようにお願いすることになっています。

 僕は伝票の内容をプリントアウトしたものを持ってお巡りさんのところへ戻り、伝票の客数とメニューの内容からあのお客さんはずっと一人だったと思うと告げました。

 お回りさんは僕が差し出したA4のプリントをしばし眺めてから、顔を上げ僕の方を見ました。
「割り勘だったということはないですか」
「というと?」
「同じテーブルでも、割り勘のために伝票を2枚発行したということはないですか? それなら人数は1人になりますよね」
「その場合はですね、セパレートチェックにするはずですから。そんな事はなかったみたいです」
「セパレートチェックとは何ですか?」

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