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2008年3月23日 (日)

モノレールの漂泊者 PART 18

 PART 1はこちらです
 雪の夜の出来事はこれでおしまいです。

時間はすでに5時を回っていました。

 中田さんは何となくすぐに帰る気がしないと言って、その後も店に残っていました。
店は無事に再開し、相田君は朝の準備に忙しく、狭いキッチンの中を飛び回っていました。
それを見て中田さんは、帽子と前掛けをつけてキッチンに入りました。

 深夜シフトは人数が少ないのでホールとキッチンは、

 臨機応変に助け合ってやっています。
小一時間ほど相田君を手伝い、その後モーニングを食べてから中田さんは帰っていきました。
太陽はようやくその姿を現したばかりで、まだ雪は溶け始めていません。
これから昼にかけて、駐車場の雪かきに忙しくなるはずです。
積もっている間はまだ良いのですが、溶け始めた雪ほど始末の悪い物はありません。

 僕は30分ほどかけて玄関回りの雪をかきだし、出勤してきたリーダーに後を託して家路につきました。

 5日後の夜、雪は駐車場の隅の日の当たらない場所に吹き寄せられるようにしてかすかに残っているだけでした。
そして、ふたたびあの日の三人がそろいました。
普通に忙しいシフトは過ぎていき、午前1時過ぎの「お水ピーク」も終わって店はすっかり押し静まっていました。

 その日は中田さんのスケジュールは朝までだったので、僕は事務処理を少し進めようと思い、彼女にホールを任せてバックに下がろうと思いました。

 僕がそう伝えると中田さんは分かりましたと笑顔で応えましたが、彼女に背を向けた時に後から、あの……と声をかけてきました。

「あの……、マネージャー。この前のお客さんはだいじょうぶだったんですかね?」
「この前のお客さんって、あの瞬間移動の女の人のこと?」
ちょっと意地が悪かったでしょうか、それを聞いて苦笑しながら中田さんが言葉を続けました。
「そうですそうです。あの人です。どうなったか知っていますか?」
「少しなら……」

 何も知らないと思って期待せずに聞いたのに思わぬ返答が帰ってきたので、中田さんは好奇心で目を爛々とさせながら駆け寄ってきました。

「どうなったか知っているんですか?」

 僕は少しもったいをつけてやろうかと思いましたが、かわいそうなのでやめました。

「きのう、K署の人が店に来たんだよ。ちょっとだけ事情を聞かれた…… その時に少しだけ聞いたことがあるよ」

 ふとキッチンの方を見ると、こちらの様子をうかがっていた相田君が僕たちのやりとりに見入っていました。
中田さんは手にしたトレイを、ぎゅっとたわませながら僕の言葉を待っていました。

 モノレールの漂泊者 PART 19につづく

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