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2008年3月20日 (木)

モノレールの漂泊者 PART 17

 PART 1はこちらです
「そんなことないと思います」
「じゃあそのトラックは何色だった?」
「銀色だったかな……」
「2車線のうちのどちら側を走っていた?」
「分離帯側だと思います」

 店の前の道路は片道2車線です。
道路の真ん中にはモノレールの柱が立った分離帯があります。
普通の夜なら、

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 トラックはその追い越し車線、つまり分離帯に近い側を捕まれば一発で免停確実の速度で走り抜けています。

 しかし今夜は雪が降っていました。
僕は覚えていますが雪の積もり方は分離帯側の方がひどかったように思います。
この先の交差点は左折する車が多いので、路側側の方が交通量が多く雪は溶けていたのです。
トラックはたぶんそちらを走っていたと思います。
他に車は走っていなかったでしょうから、わざわざ雪の深い方を選ぶ理由はありません。

 中田さんはその辺の記憶が飛んでしまっているので、普段この時間のトラックが通っている分離帯側の方を走っていると思ってしまったのだと思います。
これも中田さんの脳が過去の経験から一番近い情報を引き出してきて無理矢理当てはめたせいです。

 これは中田さんの意思とは関係なく行われるので、彼女自身は実際にあったことと感じます。

「だから君は、あんな短時間にどこにも行けるはずがない。それで人間が消えたと思ったんじゃないかな」
「でも……」
「だけど、救急車で連れて行かれたあの人は何だった? 普通のおばさんでしょ。あの人が幽霊か、あるいは特殊な能力を持ったミュータントなのかな?」
「でもたしかに一瞬で……」

 僕は、これまで黙って話しを聞いていた相田君の方に話しを降りました。
「相田君は、どちらが正しいと思う?」
「そりゃぁ……」
相田君はちらりと中田さんの方に視線を走らせましたが、きっとにらみ返されたのであわてて僕の方に向き直り缶コーヒーをテーブルに置きました。
「わかりません」
うーん、情けないヤツ……

 その時店内清掃をしていた業者さんが作業が終了したと知らせに来ました。
後は確認して、伝票に判子を押すだけです。
予定より20分ほど早く終わっていました。
この雪では次の店までの移動に時間がかかるので普段より急いだんでしょう。

 作業確認のため清掃会社の責任者といっしょにホールに向かう僕の背中に、中田さんが声をかけました。
「マネージャー。あの人は普通のおばさんじゃありませんよ」

 何をまだ言っているんだと僕が振り返ると、中田さんはあやしい笑顔を浮かべながら言いました。

「普通のおばさんは一週間の店にいたりしません。それに札束の入った紙袋なんて持ってませんから……」

 モノレールの漂泊者 PART 18につづく

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