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2008年3月18日 (火)

モノレールの漂泊者 PART 16

 PART 1はこちらです
「それは姿を消したんじゃなくて、見てなかっただけだよ」
「そんなことありませんよ。私はずっと目を離していません」
中田さんは納得がいかないという表情で、こちらに視線をよこしました。

「だって、君は自分で言ったじゃないか。トラックが走り去った後に、あの人は消えていたって」
「そうだけど……」
「だからそういうことだって。トラックが通り過ぎる間、君はあの人を見ていなかった」

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「でも私が目を離したのはトラックが通り過ぎるほんの一瞬だし。そんな短い間に人間は移動できないでしょ。階段から倒れていた場所まで4メートルはあるし。絶対無理です」
「ほんとうに無理?」
「だって雪も積もってたし…… そんなに早く動けるわけないです」
中田さんは雪に湿った手袋を握りしめながら僕に反論しました。

「ほら、また答えを言っているよ」
「何がですか?」
「雪が積もって早く動けなくなるのは人間だけ?」
「……」
「あの時君の視線を遮ったトラックはチェーンをしていたのかな? そうでなければゆっくり走るしかないよね。たとえつけていたとしても、普段のスピードは出せない。つまり君が思っているよりずっと長く視線は遮られていたんじゃないかな」

 店の前の道路は深夜になるとトラックが猛スピードで走っています。
朝になる前に少しでも距離を稼ごうとしているのかもしれませんが、周辺の住民にとっては頭痛の種です。

「中田君は何となくあの人の方を見ていた。そして前を通り過ぎたトラックにつられて視線を左方向に流した。次の瞬間視線を戻したときにはあの人はすでに歩道に倒れ込んでいたんだと思う」
「そうかもしれないけど……」
「君はあの人の姿が見えなくなったので相当に驚いたと思う。そういうときに脳は複数の情報を素早く処理できなくなる。トラックがどのくらいのスピードで走ってたかの記憶が消えてしまったんだと思う」
「……」
「仕方が無いから君の脳はふだん見ている車のスピードの記憶をどっかから引っ張り出してきて当てはめた。君はその間違った情報をもとに、そんな一瞬でどこかに姿を隠すことはできないと判断した。だから消えたと思ったんだよ。実際には、あのお客さんは、その間に立ち上がり、数歩歩いてあの場所まで行き、おそらく足を滑らせて転倒したんだと思う」

 モノレールの漂泊者 PART 17につづく

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