« アマゾンで、すでに「KORG DS-10」が売られてる! | トップページ | 涙のバランタイン »

2008年3月14日 (金)

モノレールの漂泊者 PART 15

 PART 1はこちらです
 普段の中田さんの仕事ぶりから見て、彼女のいっていることは信用できると思いました。
中田さんがお金を見たというなら、それはあったんでしょう。

 しかしそれにしても、それだけお金を持っていたなら
「何も、この雪の中、凍えていることはないと思うけどなあ」と僕はその点では相田君に賛成であることを表明しました。

「お話中申し訳ないけど、ちょっと話しが聞きたいんだが」
僕たちが後を振り返ると、

人気blogランキングへ

 今まで本部と無縁で連絡していたらしいお巡りさんが、いつの間にか僕たちの後に立っていました。

 僕は店の前で起こった交通事故のことを思い出しました。
こういうときに、警察の人は第一発見者を絶対にすんなりと解放してはくれないのです。
警察が来る前にその場を離れてしまえば良かったのですが、まあそうもいきませんでした。
今回は事件性がないのでいいですが、万一何か不測の事態が起きれば(実は誰かに殴られていて容態が急変したとか)、現場の警察官は身元を確認せずに第一発見者を解放してしまえば責任を問われます。

「さて、まずあなた方のお名前は?」
名前、住所、電話番号、こんな時間に何をしていたのかとそれぞれ聞かれました。
仕事中だったというと、勤務先を聞かれました。

 そして近くのファミレスの社員だと説明したのですが、店はどうしたのかと質問されました。
僕は仕方なく、清掃作業のため一時閉店をしているので店を離れることができたことなどを説明しました。

 お巡りさんは、これをノートにメモを取りながらやっているので、時間がかかります。
途中で僕の名前の漢字が分からなかったときは、僕がペンを借りて書きましたが、かじかんだ手はうまく動いてくれませんでした。

「お巡りさん、ここじゃ寒いですから。店の中に行きませんか?」
「うーん、しかしお宅の店は関係ないようだし、それは……」
「でも、あの人は少し前までうちの客席にいたんですよ」
中田さんが余計なことを言いました。
そう聞いてお巡りさんとしては、そのことに関しても質問しないわけにはいきません。

 いつからいつまで店にいて、何を食べたか、そんな様子だったのかのどを聞かれ、さらに時間がかかりました。
僕と相田君は中田さんに非難の目を向けましたが、彼女はどこ吹く風です。
中田さんは帰るところだったので、それなりの格好をしています。
しかし僕たちは、そうではありません。
特にコックコートにジャンパーを引っかけただけの相田君は震えていました。

 僕の革靴は、雪が溶けた水分をソールの脇から少しずつ吸収し始めていました。
相田君の履いているスーパースターはすでに水分をたっぷり含んで色が変わっています。
中田さんはと見ると、真っ赤なハンターのレインブーツで武装していました……

 結局解放されるまでに、30分ほどかかりました。
一番の被害者は相田君でしょう。
僕らはひとまず店に戻って、温かいドリンクでも飲んで身体を温めることにしました。

「あれ、マネージャー? 今はホールに出られないんじゃないですか?」
そうでした、今頃ホールの床はワックスが乾くのを待っている頃です。
それが終わるまで、ホールに入れないので飲み物さえ飲めないのです。
仕方なく僕たちは途中の自動販売機で缶ドリンク買って店まで急ぎました。

 僕たちは走って店内にすべり込み、暖かい休憩室を目指しました。
休憩室のイスに座り、ホットコーヒーの缶を両手で包み込んで手を温めながら中田さんが言いました。

「でも、あの時あのお客さんは確かに一瞬姿を消したんですよ。絶対に見間違いじゃないんです。落ちるところを私は見ていません」

 モノレールの漂泊者 PART 16につづく

 過去ログのインデックスへ
 TOPページへ

人気blogランキングへ

|

« アマゾンで、すでに「KORG DS-10」が売られてる! | トップページ | 涙のバランタイン »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/179348/40502801

この記事へのトラックバック一覧です: モノレールの漂泊者 PART 15:

« アマゾンで、すでに「KORG DS-10」が売られてる! | トップページ | 涙のバランタイン »