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2008年3月 7日 (金)

モノレールの漂泊者 PART 13

  PART 1はこちらです
「自分のことは自分で心配しますから」
その女の人は言いました。

 あまりにも毅然と拒否されたので、そこに居合わせた人間は三者三様に困ってしまいました。

 僕としてもほんの一時間ほど前まで、店にいたお客さんです。
他の二人にしても、このままにはしておけない理由があります。

 救急隊員の人は職業上自分でだいじょうぶと言っているからといって、

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 このまま立ち去るわけにはいきません。
お巡りさんにしても、自分の管内で起きたことです。
責任があります。

 ここで一番強かったのは救命士の人でした。
「だいじょうぶかどうか病院に行ってみなければ分かりません。人はけっこう簡単に大変な事態にはまってしまうんですよ。さあ乗って下さい」
その有無を言わせぬ口調に、お巡りさんも後押しをされたように言葉を重ねました。
「そうだよ、お母さん。病院に行ってみようよ。どうしても嫌だというなら、このまま一人で帰すわけにはいかないから、誰か家族の人に迎えに来てもらわないと……」

 家族に迎えに来てもらわなければだめだという言葉を聞いて、急に彼女の態度が変わりました。
「分かりました。病院には行きます、それでいいですか。でも誰ですか、救急車なんて呼んだのは?」
彼女はそう言ってあたりを見回しましたが、そこにいたのは救命士さんとお巡りさんと、僕たち三人だけです。
誰が呼んだのかは明かです。

 彼女は僕の方に強い非難のまなざしを向けましたが、それ以上は何も言いませんでした。
僕はその視線に耐えかねて、雪の上に落ちている紙袋を取り上げました。
それは思ったよりずっと重く、ひもの部分が凍えた指に食い込みました。
白くなった指先を見ながら、この中にはいったい何が入っているんだろう?
そう思いました。

 彼女はその後は一言も文句を言わずに救急車に乗り込みました。
僕は救急車の隅の方に拾い上げた紙袋を積み込み、このあとどうしたらいいか考えました。
店内にいる間に具合が悪くなったお客さんなら、場合によっては一緒に病院まで行くこともあるでしょうが、今回はそこまでする必要はないだろう思いました。
死して、救急隊員の方に「お願いします」と声をかけました。

 救急車は女の人を乗せるとすぐに病院に向かって車をスタートさせました。
女の人との数分のやりとりの間に、すでに行き先の病院は決まっていたようです。
お巡りさんは救急隊員から聞いた病院の名前を手帳に記し、無線でどこかと連絡を取り始めました。

「マネージャー。あの紙袋に何が入っているか知ってますか」
そう声をかけてきたのは、中田さんです。
僕と相田君は中田さんの方に視線をやりました。

「……って 中田さんは知っているの?」
そう聞くと彼女はいたずらっぽい笑顔を浮かべながら、僕と相田君の方を交互に見ながら言いました。

「ええ、だってあたし見ちゃいましたから……」

 モノレールの漂泊者 PART 14につづく

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