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2008年3月 5日 (水)

モノレールの漂泊者 PART 12

 PART 1はこちらです
「平気ですかね?」
中田さんがお客さんの顔を心配そうにのぞき込みます。
「たぶん…… そんなに強く打った様子はないし]

 そのお客さんは目を一度強く閉じ、再び開いて言いました。
「私は、何をしているんでしょうか?」

「モノレールの階段から転げ落ちてしまったようですね。ちゃんと喋れるようですから心配はないかもしれない」
「すみません……」

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 救急車は警察への電話を切ったあと直ぐに相田君が連絡済みでした。
五分以内に到着するということでした。

 するとお客さんが両手を雪の中について起き上がろうとしました。
手袋をしていない手が雪をつかみます。
その手は赤くなってはおらず、むしろ血の気がひいてくすんだ暗い色になっていました。

「お客さん、動いちゃダメですよ。すぐに救急車が来ますから」
そう言う僕に、彼女は強く首を振って半身を起こしました。
「救急車なんて必要ありません。だいじょうぶですから」
そう言って僕の制止を振り切って立ち上がろうとしましたが、さすがにバランスを崩して再び雪の上に手をつきました。

「ほら、危ないじゃないですか。何ともないかもしれないけれど、一応お医者さんに見てもらわないと」
「余計なお節介です。自分のことは自分でします。放して下さい」

 そう言って本当に立ち上がってしまいました。
その時、近くにある派出所から警官がやって来ました。
派出所は数百メートルの所にあるので救急車より早く到着したようでした。
「雪でこけたんだって? お母さん、こんな所で何してたの?」
人の良さそうな若いお巡りさんが語りかけました。

「私はだいじょうぶですから。救急車なんて必要ないです。もう帰りますから」
一週間も店に居続けたのに、いったいどこに帰るというんだろう?
僕はそう思いました。

「とりあえずお母さん、名前は? しゃべれる?」
お巡りさんがそう質問しているところに、サイレンを鳴り響かせながら救急車が到着しました。

 この雪の中、深夜にもかかわらずこんなに素早く駆けつけるなんて、警察も救急も捨てたものではないと思いました。

 歩道に降り立った救急隊員は素早く彼女の状態をチェックすると、ストレッチャーに乗るように言いました。
しかし彼女は、それを頑として拒否しました。

「私はぜったい病院には行きません。自分のことは自分でします」
「いや、そうは言ってもお母さん。万一ということもあるし。頭を打っているかもしれないし。ねえ、救命士さん?」
救命士さんはその言葉に大きくうなずきました。

「この状態で、このままというのはちょっと心配ですね」
「ほら、やっぱり病院に行った方が良いって……」

 モノレールの漂泊者 PART 13につづく

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