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2008年2月18日 (月)

モノレールの漂泊者 PART 5

 PART 1 はこちらです
 1時半を回りそのお客さんを除いて全ての方が退店されて、ホールにいるのは僕とそのお客さんと、前日と同じ大学生アルバイトの中田さんでした。
彼女が言いました。
「マネージャー、お会計のお願いなんですけど、私の代わりにいってもらえませんか?」
「うん? いいけど……」

 閉店の十分前になると、在席のお客様に会計のお願いをします。
2時には清掃業者さんに店を受け渡さなければならないからです。
すでに駐車場には、

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 業者さんの車が数台停まっていました。
清掃の道具を出したり、水の準備、洗剤の用意など、時間通りに終わらせるための作業はすでに始まっています。
店内の雰囲気は相当に落ち着かないものになっています。

 僕がそのお客さんの方に行くため足を踏み出そうとしていると、不意に彼女が席を立ちました。
小さなバッグと紙袋が1つ。
それが彼女の全ての荷物でした。

 彼女の持つ色はブルーでビニールコーティングされた紙袋を見ながら、あのお客さんの歩いているところは初めて見るなと僕は考えていました。

 呼びに行く必要がなかったので、会計は中田さんが済ませました。
お客さんはそのままとぼとぼと出口に向かいました。
パンパンにむくんだ足が、すごく痛そうでした。

 だいじょうぶですか?
よっぽどそう声をかけようかと思いましたが、そんなことをしてもどうしようもないことが解っていたので言葉をのみ込みました。
ひとつだけ安心したのは会計の時に、彼女が財布の中がちらりと見えたことです。
正直に言えば、まあのぞき込んだわけですけど。

 財布の中にはかなりの紙幣が入っているのが見えました。
それは数枚の青色系統の紙幣を除いて、そのくすんだ色合いから見て高額紙幣のようようでした。
少なくともお金はあるようなので、雪の中出て行くとしてもそれでタクシーを呼ぶなりして、健康ランドに行くこともできるだろうと思いました。

 会計を済ませたお客さんの後ろ姿を見ながら、僕はあることを思い出しました。
「中田君、あのお客さんって携帯は持っていたかな?」
中田さんは、少し首をかしげていましたが、
「さあ、解らないですけど、私は見たことはありません」
と答えてくれました。

 その時僕は思いました。
たとえ携帯を持っていたとしても、すでに入店して一週間。
電池が切れている可能性が高いです。

 ぼくは玄関のドアに手をかけたお客さんに向かって言いました。
「お客様、タクシーを、お呼びしましょうか?」

  モノレールの漂泊者 PART6につづく

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