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2008年2月13日 (水)

まつ毛とコンタクトとエクステンション

 ある日高校生アルバイトの相原さんが、仕事中に突然涙を流し始めました。
客席にオーダーを取りに行って帰ってきたと思ったら、ぼろぼろと泣いていました。

 これは客席で何か失敗でもして来たんだろうと思い、そこにいたみんなが心配していると、
「店長すみません、ちょっと裏へ行っていいですか」
相原さんが、そう言いました。
「いいけどどうしたの?」

 それに対する相原さんの答えは、

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 まつげが目に入ったというものでした。
確か彼女はコンタクトを使っていたはずです。

 僕もコンタクトとメガネを使い分けているので、その痛さがよく分かりました。
まつげが目に入っただけならまだいいのですが、まばたきによって運悪くレンズと角膜の間に巻き込まれてしまうと最悪です。
(あと、目頭の柔らかい部分に突き刺さったヤツとか)
とにかく涙が止まらなくなります。

 誰かが、あれは痛いんだよというと、コンタクト装着者はみんなうなずきました。

 そこに相原さんが戻ってきました。
すでに泣いてはいませんでしたが、その目は真っ赤です。
さらに、その顔にはメガネがかけられていました。
コンタクトはバックルームで外したようでした。

「店長すみません。オーダーを取っていたら、まつげが抜けて目の中に入ったんデス。でもお客さんの前だから、すぐに取るわけにいかなくて……」
事情を知らない人が見たら、泣きはらした後だとしか思えない状態で相原さんは言葉を続けます。
「まばたきしながらガマンしてたら、レンズの裏っかわに入っちゃったんデス。そうしたらもう涙が止まらなくて」

 そこに団体用にに広げてあったエクステンション・テーブルを元に戻していた大学生アルバイトの藤田君が戻ってきました。
「相原は目が大きいからな。そりゃまつげも入りやすいだろう」
腕を振って、疲れたというそぶりをしながら彼が言いました。
そう、確かに相原さんは目が大きく、一般的に言って「かわいい」という部類に入る女の子です。
しかし目は相当悪いらしく、コンタクト無しには三メートル先の人間も見分けられないと言っていました。

 ホールに出ていたので話しはそこで終わりましたが、その後彼らがバックルームにいるところに僕は出くわしました。

 藤田君が話しかけてきました。
「店長もコンタクトでしたよね。やっぱりまつげが目に入ったりしますか?」
「そうだな、時々あるよ」
「そうですよネ」
相原さんがうなずきます。
「店長も無駄に目が大きいですからね」
藤田君が失礼なことを言いました。

「何だと?」
僕が彼をにらむと、首をすくめながら彼は言いました。
「でも店長、まつげが入ったりしないいい方法があるんですよ」
「だからそれは絶対だめダッテ」
相原さんが異議を唱えました。
「何? いい方法って」
「それはですね、抜ける前に指でつまんで強く引っ張って、弱ったまつげを抜いてしまうんですよ。そうすれば、目に入ったりはしませんから」
「なるほど、自然に抜ける前に抜いてしまうのか」
僕が感心していると、相原さんが口をはさんできました。
「そんなのダメです!」
「なんで?」
「まつげは命なんですヨ。せっかく生えているのに抜ける前に抜くなんて考えられないから!」

 なるほど、まつげは命か……
女子高生にとってはそうかもしれないけど僕には関係ないから、これからはやってみようかな。
そう思って、試しにまつげを引っ張ってみました。
やってみると指に五本のまつげが残りました。

 なるほど、これが近々抜ける予定だった弱ったまつげか。
しかし今抜いてしまったから、少なくとも数日は不意にまつげが抜ける心配はなくなったのかもしれないと思いました。

「店長、まつげだけじゃないですよ。抜け落ちて困る毛は風呂に入ったときに全部抜いてしまうんですよ」
「それは髪の毛ってこと? 僕はそんな心配は全然ないけど、それこそ髪に悩みのある人にとっては大事だろう。 抜けるまで一日でも長く生えていた方がいいんじゃないの?」
「違いますよ店長。ほかに部屋に落ちてたら困る毛があるでしょう」
藤田君が意味ありげな笑顔をこちらに向けながら言いました。

 相原さんが非難の目を藤田君に向けましたが、彼は平気な顔をしていました。

 うーん、そいつはどうしようかな……

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