« 分速210打から245打へ | トップページ | 横浜ケンタウロスと、ガーバー FS Ⅲ »

2008年2月 4日 (月)

モノレールの漂泊者 PART 1

「店長、困ったことがあるんですけど」
寒さの厳しいある日、会議の帰りに店に寄った僕に、アルバイトリーダーの斉藤君が近づいてきて言いました。
「どうしたの?」
「帰らないお客さんがいるんです」
「帰らないって、いつから?」
「昨日の夜からです……」

 寒さが一番厳しいこの時期、ひとときの暖を求めて無銭飲食のトラブルが発生することがあります。
最初からこのようなねらいで来店する人の場合は、

人気blogランキングへ

 入店時に様子を観察したり、途中での会計をお願いしたりして防護策もあります。

 入店中に会計を済ませてもらうことはファミレスではイレギュラーなことですが、これでお金を持たずに入店する人の場合は被害を最小限にとどめることができます。

「会計はお願いしたの?」
「はい、すでに今日の昼に葛西さんがやっています」

 葛西さんというのはランチタイムの接客をやってくれているパートの人です。
前日から12時間以上在籍し続けるそのお客さんを不審に思い、一度会計を済ませてくれたようでした。
お客さんを疑うようで嫌なんですが防衛策としてはしかたがありません。
以前、マンガ喫茶で何十日も居座ったあげくにお金を持っていなかった人の話をニュースで見たことがあります。

 僕もそこまでではありませんが、副店長の頃に一週間ほど店に居続けた人の記憶があります。

 当然その時も一日一回は会計をお願いしたのですが、その都度きっちり支払いをしてくれたので、お金は十分に持っているようでした。
騒ぐわけでもなくおとなしく座っており、ぼんやりと遠くを見つめるだけでまったく何もしない人でした。
お地蔵さんのようにピクリともしないので、具合が悪いのではないかと思い、近くで様子をうかがうとこちらの方を見てきます。

 一日に二回、朝と夕方に食事をするだけで、他に動くのはトイレに行くときぐらいです。

 問題を起こすわけでもなく、ただ座っているだけで、会計も毎日きっちり済ませるので長時間居続けられるのは困ると思いながらも、どうしようもありませんでした。
その間そのテーブルからの売り上げは、一日千円ちょっとなのでファミレスとしては死活問題です。

 何日目かに、ひょっとしたら家出をしている人かもしれないと思い警察署に問い合わせをしましたがそれらしき届け出は出ていないということでした。

 毎日来る日も来る日も出勤してみると客席にぽつんと座っているその人を見て、ため息をつくだけでした。

「店が開いている限り、ずっと居続けるつもりなのかなあ」
僕がそうつぶやくと、当時一緒に働いていた大学生のアルバイトの中田さんが、片付けてきたお皿が山のように積み重なったトレイをカウンターに置きながら僕の方を見ました。
彼女が言いました。
「大丈夫ですよ、明日は絶対に帰らないといけなくなりますから」
「どうして?」

 彼女は新しいトレイを右手でつかみ、くるりと回して左手に持ち替えると得意げに言いました。
「だって明日は……」

  モノレールの漂泊者 PART 2 へ続く 

 過去ログのインデックスへ
 TOPページへ

人気blogランキングへ

|

« 分速210打から245打へ | トップページ | 横浜ケンタウロスと、ガーバー FS Ⅲ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/179348/17958761

この記事へのトラックバック一覧です: モノレールの漂泊者 PART 1:

« 分速210打から245打へ | トップページ | 横浜ケンタウロスと、ガーバー FS Ⅲ »