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2008年2月12日 (火)

モノレールの漂泊者 PART 3

 PART 1 はこちらです
 「すみません、少々お話があるんですが」
そう言いながら近づいていくと、そのお客さんはうつろな目を僕の方に向けて来ました。
遠くで見るよりずっと若い感じがしました。

 さっきまで考えていた推定年齢より、ひょっとしたら10歳ぐらい若いのかもしれない。
そう思いました。

「何でしょう?」
それが僕が聞くその人の初めての声でした。
やっぱり、

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 思ったよりすっと若いようでした。

 近くまで来てもう一つ分かったことは、一週間座り続けたおかげで、そのお客さんの足は膝から下がパンパンにむくんでいたことです。
このようすでは足だけではなく、おしり、腰、背中など、あらゆる身体の部分が痛むのではないかと思いました。
他人から強制されればそれは拷問に等しいかもしれません。

 しかしそれはお客さんの好きでやっているので、僕が何か言うことではありません。
ただ、明日の夜閉店することはどうしても告げなければならない、天気予報では雪が降るかもしれないといっているし……

「お客様、実は明日の夜店内の清掃作業があるんです。それでその間、2時から5時まで閉店するのですが」
そう言うと、その人は目を多少大きくして眉間にしわを寄せながら口を開きました。
「えっ、そうなんですか。ここは24時間営業じゃないんですか?」

「確かに24時間なんですが、月に一度は閉店しなければできない清掃作業をするんです。その間は営業できませんので全てのお客様に会計をお願いしています」
そのお客さんは少し考えるようなそぶりをして
「清掃って何をするんですか?」
と、僕に聞いてきました。
「じゅうたんを洗ったり、床にワックスをかけたりします」

「わたしは、かまいませんけど」
「えっ?」

 僕は彼女が何を言っているのか分かりませんでした。
僕が戸惑っていると、彼女はいいました。
「私にかまわず、作業してもらってけっこうです」
僕はあわてて
「いや、そういうわけにはいきません。作業中はほこりもたちますし、水も使います。それにお客様だけではなく、私達従業員も店内にはいられないんです」

 僕がそう説明すると彼女は悲しそうな目をしていいました。
「分かりました、明日の2時から5時ですね」
そこで僕は気づいて、付け足しました。
「明日といっても正確には、あさっての午前2時からです。3時間の予定で作業に入りますので、よろしくお願いします」

 そう言ってお客さんの所を離れながら、僕は嫌な気分になりました。
当然のことを伝えただけなのに、何だか自分が悪者のような気がするのはどうしてだろう?

 そして次の日、僕が出勤してくるとそのお客さんはまだ席に座っていました。

 モノレールの漂泊者 PART 4へつづく

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