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2007年12月27日 (木)

雨の日にやって来た、おじいちゃん PART Ⅳ

 村尾と名のるご婦人は、自分の父親が支払いを忘れて帰ってしまったときのためにお金を預かり、そこから精算してくれないだろうかと言いました。

 しかしこれは店長として、了承しがたい理由があります。
というのも、店にある現金は全てきちんと管理され、

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 存在する名目が必要です。

 店内にある現金は、支払いの際に釣り銭として使う両替準備金と、売上金だけです。
両替金は一定の額に決められており、差額は売上金として毎日銀行入金されます。
つまり店にある現金は両替準備金と(レジと金庫内に保管)、当日の売上金だけなのです。

 村尾さんから現金を預かるとすると、当然金庫内に保管することになります。
しかし金庫内に、存在理由のはっきりしない現金があることは会社の規定上あってはならないのです。(誰のものなのかはっきりしないから)
仮に本部の監査があれば、引っかかってしまします。

 現金の管理は、店を預かる店長として最も注意しなければならないことなのです。

 といって、村尾さんの事情も分かります。
店としても、支払いを忘れるようなことが度重なれば、入店をお断りすることも考えなくてはなりません。
村尾さんとしては、今後も店を利用できるようにしてほしいと考えています。

 そこで僕はぎりぎりの提案をしました。
それは村尾さんにプリペイドカードを買ってもらい、それを記名した上で店でお預かりするという方法です。
お金を預かるのと、カードを預かるのと何が違うのかと思われるかもしれません。
しかし、大きな差があります。

 というのも法律上、現金は手渡した時点で所有権が移転します。
(難しいことは省きますが、法律上そうしておかないと色々と不都合が生じるのです。ただし所有権が移ると言っても、返せと言われて返さないでよくなるという意味ではありません)
店長としては、そのようなお金が店にあることを説明できません。
しかし、カードならば記名してもらえば、どこにあろうと所有権は村尾さんのところにあります。

 カードから精算するのに店が勝手にやってよいのかという問題はありますが、これは事前の承認があったということで良しとします。
伝票とレシートを保管するという方法で出し入れの記録もできます。

 要するに詭弁ではありますが、何とか会社の現金管理規定に反しないと言えなくもないというところでしょうか……

 僕の提案に村尾さんはたいへん喜んでくれて何度も頭を下げてくれました。
ただし僕も言っておかなければならないことがありました。
「村尾さん、これは僕が個人的に考えた手段ですので、会社としての配慮ではありません。ですから問題が生じない限りは、僕の責任でこの方法で結構です。しかし、店長が替わったら、その後のことは保障はできません。もちろん申し送り事項として、次の店長には伝えますが僕に強制力はないですから」

 これがサラリーマン店長の限界です。

また数日して、出勤すると梨田さんが僕のところに来て言いました。
「今日初めて、村尾さんのカードを使いました。あの後、そんなことは一度もなかったので、もう無いんじゃないかと思っていたんですけど……」
「そうか、何かさびしいね」
「ええ……。でもだいじょうぶ。きっと明日は村尾さん、心が涼やかになって、こっちの世界に帰ってきてくれますよ」
梨田さんは、笑顔でそう言いました。

       FIN

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