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2007年9月 5日 (水)

マジックソルト

 この夏、久しぶりに懐かしいいたずらにあいました。
今現在、テーブルにシュガーポットを置いている店はほとんど無いと思います。
僕が入社した頃は、まだぎりぎりシュガーポットをテーブル毎に常置していた時代でした。
シュガーの隣には塩を入れた容器も一緒に置いていました。

 たまにこの砂糖のなかに塩を混ぜるイタズラをする人がいるのです。
砂糖と塩は容器に入っていればほとんど見分けがつきませんから、運悪くそのテーブルに座ったお客さんは、塩辛いコーヒーを飲む羽目になります。
当然お客さんは店の人間にうったえます。

「このコーヒー、しょっぱいんですけど?」

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 こう言われると僕たちはすぐに理由がわかります。
おいしくないコーヒーはあっても、しょっぱいコーヒーはあり得ません。

「またやられたか!」

 すぐにそのテーブルのシュガーポットを回収して新しい物と取り替えます。
念のため近くのテーブルのシュガーポットもチェックします。
たいていは一つのテーブルか隣のテーブルぐらいですが、一度10テーブル近くをまとめてやられたことがあります。
この時はさすがに頭に来ました。

 このイタズラには流行があるらしく、連続して発生したことがありました。
発生状況からして、高校生あたりがやっているんだろうと思いました。
しかしなかなか犯人が見つかることはありませんでした。

 シュガーポットの中身は少なくなれば補充しなければなりません。
そのため一日に何回か回収してチェックするわけです。
ある日、例によってアルバイトが僕の所に来ました。

「リーダー、また砂糖に塩を入れられたみたいです」(当時まだ僕はリーダーでした)

 テーブルに行ってみるとお客さんが不快そうな顔をしています。

「このコーヒー腐ってるんじゃない? 味が変なのよ。あなた飲んでみて?」

 僕は理由がわかっていたので、なにが起こったかを説明しました。
その時のお客さんは一応納得してくれましたが、その後も店の料理の全てに何となく信用できない感じはぬぐわれなかったと思います。

 悪いのはイタズラをした人間ですが、責任は店にあります。
こういうときには一切言い訳が聞きません。

 ある時、このイタズラをやられたときに、一人のアルバイトが言いました。

「リーダー、あのテーブルは一時間前に全交換したばかりなんですけど……」

 砂糖などは補充するだけでなく、安全のために中身を全て入れ替えることがあります。
塩を混入されたテーブルは、一時間前にその全交換をしたばかりだというのです。
その席は、禁煙席でした。
働いていた人間に詳しく状況を聞いてみると、砂糖を交換してからそのテーブルの近くに座ったお客さんは一組だけだという事がわかりました。
事の性質上、自分の席以外にイタズラをするのは目立ってしまって勇気がいると思います。
ほぼ、そのお客さんに間違いないだろうと思いました。
それは高校生のグループでした。

 ファミレスで働いている人間はお客さんの顔など見ていないと思われているようですが、実際はそうでもありません。
どこかのホテルの伝説のドアマンみたいに、数千人の顧客の顔と名前をおぼえるのは無理です。
一回しか来店されないお客さんは無理ですが、常連さんの顔はけっこう覚えています。

 笑顔が素敵で感じのよいお客さんや、すごく○○○○くて、○○○○○○いお客さんの場合は、特によくおぼえています。
その時は同じ高校に通っている従業員がいたこともあって、グループを特定することができました。
次にそのグループが来たときにどうしたかというと……

 まあ、内緒にしておきます。
当時は僕もまだ若かったですから。

 その後シュガーポットは姿を消し、スティックタイプの紙容器に入った使い切りタイプが主流になりました。
これで、そんなイタズラは絶滅したかというと、そんなことはありませんでした。
紙容器の一方をカッターなどで切り取り中身を入れ替え、ふたたび分からないようにふたをするのです。
ふたをするのに使うのは、別の空の紙容器です。
これをすっぽりかぶせるようにして、ちょっと見ただけでは気づかれないようにしていました。
ある種、職人技ですね。
そして、切った方を下側にして元の場所に戻しておくんです。

 すると普通の人は異常のない上の方を破って中身を出すので、まったく怪しみません。
また僕らはお客さんに呼ばれます。

「すみません~、この紅茶、何か変な味が……」

 それでも以前よりはずっとそんな事件は減りました。
最近はほとんど無いと言っていいと思います。
昨今の社会情勢を考えれば、食品にイタズラすることが許されることではないと認識されてきたのだと思います。
場合によっては冗談ではすみません。

 話が戻りますが、今年の夏似たような事件がありました。
「店長、お客さんがタバスコが腐っているんじゃないかって言ってマス」
「タバスコ? タバスコって腐るかなあ?」
そう言いながら僕はお客さんの所に駆けつけました。

「このタバスコ、腐っているんじゃないかな。辛いことは辛いんだけど、何か甘いんだよ」
そう言われて、僕は味見をしてみました。
本当は辛い物は苦手なんですが、この状況では仕方ありません。

 なめてみるとすごく辛いけれど、確かに甘い。
本当に腐ってる?
そう考えながら、しげしげと眺めてみると何かが違う……

 色が微妙に赤い。
いや、もともとタバスコは赤いんですが、そうじゃなくて赤の明るさが違うんです。
あることを思いつき僕は叫んでしまいました。

「これは、ケチャップが混ざってる!」
「ケチャップ?」
お客さんも驚いていました。
しかし事情はどうあれ前述したとおり、お客さんに提供したものは全ての責任を店が負わなければなりません。
僕は丁重にお詫びをしました。

 そんなこんなで、久しぶりにびっくりした事件でした
 でも一つ疑問な点が。
タバスコのあの小さな穴に、粘度の高いケチャップをどうやって入れたのか?
まあ何かくふうをしたんでしょうけれど。

 タバスコにケチャップを入れたあなた!
もう一度言います。
そんなことをする暇があったら、何か他にすることがあるでしょう?

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