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2007年2月 3日 (土)

ボーナス2倍、あったなら!(ファミレス法律相談所)Ⅱ 解決編

前回の話で、手違いでボーナスが多く振り込まれるという事件のあった会社のことを書きました。
プログラムのバグによりボーナスの査定ミスが発生して、ボーナスを貰い過ぎた人と、少ない額しかもらえなかった人が発生したのです。

会社は、精算することを求めました。
少なかった人には追加支給するが、逆にもらいすぎの人間には返還を求めました。
一度もらったものを返せといわれても、なかなか素直に従うことはできません。
結局、その会社の組合は会社の申し出を受け入れました。
しかし、本当に会社の言いなりになるしかなかったのでしょうか?

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さて、解決編です。

民法703条
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

この条文は「不当利得」について定めたものです。
正義、公平の実現のためにあります。

たとえば詐欺にあった人は、それを取り消すことができます。
しかし、その損失を取り戻す規定は法律で定められていません。
法律で決められていない以上、裁判所も詐欺をした人に返還の強制はできません。

そこで、703条の登場です。
「法律上の原因なく」というのは別に悪いことである必要はありません。
大ざっぱに言えば財産などが、「本来あるべき場所にないこと」を言います。
詐欺によって奪われたものや、今回のように間違って支給されたボーナスもこれに当たります。
703条は、裁判所が法律に規定がなくて困った時のいろいろな場面に使える、言わば奥の手です。

この条文によると、そのような利益は「返還する義務を負う」と書かれています。
つまり多くもらい過ぎたボーナスは、本来会社の財産ですから、返さなければならないと法律は言っているのです。
このままでは組合側が負けてしまいます。

そこで、更に詳しく条文を見ると「その利益の存する限度において」と、あります。
これは、法律が残っている利益を返還しなさいと言っているということです。
だったらボーナスを全部使ってしまって、1円も残っていなかったら返還しなくていいのか?

基本的には、そういうことになります。
ただ、その使い道が問題になります。

たとえば、自分の銀行口座にどこからか間違って100万円が振り込まれたとします。
使い道を4種類考えてみましょう。

1 生活費の穴埋めに使った。
2 ローンの返済に使った。
3 海外旅行で豪遊。
4 競馬に全額つぎ込み、総崩れ。

このうち二つはお金を返さなくてはならず、他の二つは返さなくてよいということになります。

3、4は、本来使う予定がなかったのに、そのような「利得」が入って来たために気が大きくなって浪費した、後先考えない行動です。

1,2は、将来必ず支払わなければならないローンなどの返済に充てた堅実派の行動です。

答えは、1、2は返さなくてはならないが、浪費した3、4のケースは返還しなくてよいということになります。

理由は、海外旅行に使ったり競馬につぎ込んだりしたお金は、後に何も残っていません。
思い出や記憶は法律上、現存利益にはあたりません。
したがって残っている利益は、無いということになり返還の必要がないのです。

それに対して、ローンの返済などに充てた人は、借金が減ったという利益が残っているので、返さなくてはならないということです。

堅実に使った人は返済しなければならず、浪費した人は返済しなくてよいという一見、不条理な結果に見えますが法律がそうなっているのでしかたありません。

最初の話に戻りますが、その会社の社員の場合も「ボーナスが多かったから、旅行でもしようか」と思って使った分は返さなくてよいはずです。

ここで、

「浪費した人の方が得をするのはおかしい」
「法律は、なんて非常識なんだ」

と思う方がいらっしゃると思います。
それについての答えは、こうです。

そのお金が間違って振り込まれたことを知っていて使ったものには、上の規定は適用されないのです。(民法704条)

上の規定が適用されずに、返金しなければならないだけではなく、「利息も付けて」返す義務が発生します。
さらに損害が発生した場合には、その損害賠償責任も生じます。
法律は、うまくできています。

この様な場合、「知らなかった」という主張は通常なかなか通りません。
普通、得体の知れないお金が振り込まれていれば、おかしいと思うはずだと判断されるのです。
結局、ギャンブルなどにつぎ込んだ人がその返済を免れることは、現実的にはほとんど無いといってよいでしょう。

再び、事件のあった会社の話に戻ります。
何だやっぱり、事情を知っていたとして返還しなければならないのか?
いろいろ法律を引っ張り出してきても結果は同じか?

僕は、そうは思いません。

なぜなら、その会社の社員はボーナスの計算が間違っていることに気づいていなかったからです。
気づかなかったのが悪いとも言えないでしょう。

毎月定額の月給などが間違っていたのなら、当然気づくでしょうが、今回はボーナスの話です。
しかも、成果主義に変わって計算方法も複雑になり、誰も自分のボーナスがいくらになるのか正確に把握できていなかったと言えます。
計算に使われたデータも会社が握っています。
事実、支給した会社側がそのことに気づいたのも、支給後しばらく経ってからです。

この場合は、間違って振り込まれたお金であることに気づかずに使ってしまったことが認められる非常に珍しいケースだったと思います。

社員と会社の間の話ですから、他の契約関係で返還請求が出されることも考えられます。
しかし、なんといっても原因を作ったのは会社側であり、社員側に落ち度はありません。
返還請求が出されたのも、支給から日数が経過してからです。
十分争う価値はあると思います。
こういう時に、社員のために動いてこそ組合の価値があると思うのですが・・・

この話を読んで自分の会社の話だと心当たりのある方もいると思います。
(そんなに、いろいろな人に読まれてないかもしれないけれど?)
今からでも、頑張って請求してみてはいかがですか?
その為に、会社側から睨まれるかもしれませんが。

PS
何年前の話だか、聞くのを忘れました。
もう、時効になっているかも・・・

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