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2007年1月19日 (金)

カテーテル・アブレーション日記 PART 11 初夏の選択

    PART 1 から読むにはこちらへ

自分の身体の事を考えて手術を受けるにしても、今はいかにもまずい。
僕は、そう思いました。
その時期、店の体制を固められるかどうかは、この先の一年間を左右します。
特に今年は、春にリーダークラスの戦力が3人抜け、新しいリーダーを育てるとともに新人の教育を行わなければなりません。

「先生、手術を受けるにしても夏休みの後にしたいのですが、どうでしょうか」
「分かりました。では薬で肥大型心筋症の症状を抑えることを試みて、様子を見ることにしましょう。アレルギーなどは特にないということでよろしいですね」
「はい、お願いします。あともう一つ、お伺いしたいことがあるのですが」
「何でしょう?」
「肥大型心筋症の方は、薬で抑えるしかないのですか?」
「佐野さん、残念ながら現在のところ根本的な治療法は発見されていません」
相変わらず、さらりと重要なことをいう先生だと、僕は思いました。
しかし、

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僕としてはその方がありがたかったです。
「佐野さん、あなたの場合は肥大型心筋症の中でも、閉塞性肥大型心筋症と言われるものです。心室中隔上部と言われる部分の肥大が特に顕著な場合に起きます。そうなると左心室が収縮して血液を体内に送り出す時に通常以上に収縮します。その結果大動脈に向かう出口の部分が狭窄して、うまく血液が流れません。運動した時に苦しくなるのは、強く心臓が収縮すればするほど出口部分が狭くなるためです」

僕は高校の生物の時間を思い出しました。
心臓には4つの部屋があって、左右の心房、左右の心室があって・・・
覚えているのはそれぐらいです。
どういう仕組みで心臓が血液を送り出してくれているのか思い出そうとしましたが、無理でした。

「先生、詳しいことはよく分かりませんが、つまりこういうことですか。
心臓の真ん中の筋肉が厚くなっているために、強く収縮した時に出口の部分が狭くなる。だから心臓が動いている割に血液が流れない。ホースの先を指でつまむようなものですか?」
「うーん。ずいぶんと大ざっぱですが、基本的にはそういうことです。原因は心筋が厚くなっていることです。ですから心筋を薄くすることができれば、この病気は治るわけですが」
そこで芳賀先生は一度言葉を区切り、デスクの上から一冊のファイルを選び出しながら続けました。

「現在のところ根本的に心筋の肥大を治癒する方法はありません。しかし、これを見てください」
先生は、選び出したファイルの一ページを指し示しました。
そこには。
『経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)』
と書かれてありました。
「簡単に説明すると、厚くなっている心筋を高濃度のエタノールを注入して壊死させる治療法です。アルコールで焼いて心筋の壁を薄くするのです」

先生の言葉を聞きながら僕は馬鹿なことを考えていました。
お酒に入っているアルコールは、エタノールだったかメタノールだったか?
高濃度のエタノールというけど、それはどっちなのだろう。

  PART 12 につづく

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