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2006年8月 5日 (土)

スーパー・アルバイター PART 13    深夜のドン 1

  PART 1から読むにはこちらへ

発注量を減らすことに始まった様々な問題は、ランチのキッチンの仕事にも影響を与えました。
まず、プリパレ(野菜などの前準備)の予定量を減らし、より鮮度の良いものを提供できるようにしました。
深夜に前倒しでやっていたプリパレも、朝の納品まで食材がないためできなくなり、プリパレしてから実際に使われるまでの時間が短くなりました。
その分ランチのキッチンの作業量は増え、時間的に厳しい状態になったことを考え、ランチの作業の一部を深夜にシフトさせることにしました。
それが解凍作業でした。
解凍作業は、マイナス20度の冷凍庫に30分近く入らなければならないため、負担が重くつらい作業です。
「深夜のメンバーは解凍についてなんて言ってましたか?」
堀田さんは心配して、僕に聞いてきました。
「いや、別に。快く引き受けてくれたよ」
そう言いましたが、そうすんなりとはいきませんでした。
マイナス20度の冷凍庫にはいる仕事なんて、誰も進んでやりたいはずはありません。

僕がそのことを深夜のキッチンの中心メンバーである武内君に話すために夜のシフトに入ったのは、堀田さんと話をする5日前のことでした。

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武内君は、働き始めてからすでに6年目だということです。
仕事のレベルは高く、上限一杯の評価級が付いており、ランチの堀田さんと並んで店の最高時給をもらっています。
評価給というのは、店長によって必ずしも公平につけられているとは言えず、トラブルの元になる場合もあります。
しかし、この二人の場合正当な評価と言うべきでしょう。
武内君は、大学生ですがすでに6年目ということです。
噂によると難関で知られる国家試験に挑むため、わざと留年しているらしいのですが、彼自身がそのことについては一切語らないので真偽のほどは分かりません。
基本のシフトは、0時から8時まで、時には21時から翌6時までのスケジュールで働くこともあります。
彼は、そのうち1時から8時までのキッチンを一人で受け持っています。
深夜は入客が少ないとはいえ、一人しかいないプレッシャーは常につきまといます。
1時過ぎには、店がはねた後の飲み屋ピークがあり、時には席が埋まるようなこともあります。
そんなときも武内君は、一人で持ちこたえます。
素早い料理提供は無理ですが、それなりに順番通りに料理が出てくるので苦情にはなりません。
そのような場合にできるだけ早く料理を出すには、手の早さも必要ですが、それよりも頭の回転が重要です。
自分の体と、キッチンの調理器具を一瞬も休ませることなく動かし続けなくては料理は出てきません。
その為には、すべての料理の、30秒後、1分後、3分後の状態から逆算して、無駄のない作業組み立てをしなければなりません。
しかし、人間の短期記憶には限界があります。
完全に把握するには、通常は10個以内が限度でしょう。
しかし現実には、20近い料理を同時進行で進めなければならないようなこともあり得ます。
なれない人間がこの様な状態につっこまれると、すべての料理が出てこなくなります。
しかし、修羅場をくぐり抜けてくると不可能なことができるようになってくるから不思議です。
これは理屈じゃなくて、ある日突然できるようになります。
それまでうまくいかず苦しんでいたことが、ある日を境にできるようになります。
僕は精神論は大嫌いなのですが、これは事実なので仕方ありません。
ですから、繁忙店での経験は将来のためには是非とも必要です。
僕は新入社員の頃、夏休みの1ヶ月間リゾート地にある繁忙店に業務応援に出されたことがあります。

8月1ヶ月の売り上げが6000万円を超え、ピーク時は1日の売り上げが300万を超える店でした。
会社にとって、今では望むべくもない売り上げですが、働く方は大変でした。
県内の生きの良い若手社員が1週間交代で送り込まれ、地区全体でフォロー体制を組んでいました。
そこに僕は通常1週間の所、8月いっぱい送り込まれました。
選ばれたことを喜ぶべきなのかどうなのか・・・
とにかく夢のような地獄のような1ヶ月は、良い経験でした。

昔話を書きすぎました。
自分の店ではこんな話は絶対にしないのですが、ここは自分のブログなのでいいでしょう・・・
僕が武内君に、深夜の時間帯に解凍作業を持ってきたいと話したときの彼の反応は冷たいものでした。
「店長、それは絶対無理です。深夜は一人なんですよ。オーダーが入っても冷凍庫の中に入っていては気づきません」
確かにその危険はあるのですが・・・

  PART 14 につづく

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コメント

こんばんわ。やっぱり店長さんは能力の高いすごいお人なんですね!
店の改善策を次々と提案し、各リーダーさんたちの協力・信頼を得ることは中々出来ることではないですよ。
深夜の業務に支障がないよう、どう策を練ったのか、続きが楽しみです★

投稿: panda | 2006年8月 5日 (土) 19:29

pandaさん、コメントありがとうございます。
能力が高いなんてことはないです。
貴重な体験をさせてもらったおかげだと思います。
僕を応援に派遣してくれた、当時の店長と販売部長に感謝しています。
今ではそんな体験をしようにも、そんな売り上げ規模の店がなくなってしまったので無理になってしまいました。

投稿: ばーど | 2006年8月 5日 (土) 22:53

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