« 冷凍マグロにばける方法 | トップページ | ただいまココログ冬眠中(夏だけど・・・) »

2006年7月10日 (月)

ファミレス界の、達人シェフ

ファミレスは同じチェーンであれば、どこでも同じ味の料理が楽しめるはずでしたが、最近は残念ながらそうはいかなくなってきています。
ファミレスでは、プロの調理人を使っていません。
調理師の資格を持っているのも、店長一人というところがほとんどだと思います。
もっとも、調理師の資格と料理ができることとは関係ありませんが・・・
ファミレスでは、料理を一度もしたことがないアルバイトの高校生男子でも、3ヶ月後には一人前に育てます。
何故そんなことができるかというと、普通の料理人が長年の修行で体得する技術を、誰にでも分かる数値にしてマニュアルを作っているからです。
たとえば、料理をしたことがない人間にフライパンでハンバーグを焼いてみろと言ったとします。
おそらく、火が強すぎて表面だけ焦がしてしまうか、火が弱すぎて中の水分が抜けてパサパサになってしまうか、どちらかだと思います。
どのくらいの温度で、どのくらいの時間焼けばいいか知らないから、失敗をします。
料理人の世界ではこういう事を、

人気blogランキングへ

修行によって先輩から盗み取って技術を高めます。
だから、一人前になるのに何年もかかっていたのです。
これを、教えるという姿勢に変えるだけで修行期間はかなり短縮できると思います。
まあ、この修行制度には、その過程で料理の世界に向いている人間とそうでない人間を振り分ける意味もあるのだと思います。
もう一つ切実な問題として、教育には経費がかかるということです。
一人の人間を、料理の習得だけに専念して教育すれば、1ヶ月で普通の修行の1年分の効果を上げることも不可能ではないと思います。
しかし、1ヶ月分の人件費は店の負担になります。
使用する食材だってただではありません。
この経費を短期間に集中して負担することは、店の経営上できないのです。
たとえば1年間、みっちり教育だけに専念させれば一人前になって、店の戦力としてバリバリ働いてくれる。
そういう保証があれば、そういう方法も採れるかもしれません。
しかし、現実には途中で辞めてしまう人間もいるでしょう。
そうすると、それまでにかけた経費はすべて無駄になってしまいます。
だから、店としては教育の密度を薄くして、その間に雑用などで労働力をある程度回収して、経費を分散させます。
その間に生き残っていったものが、プロの料理人になるのだと思います。
教育の密度を薄くすると書きましたがこれは、修行をする人間に熱意が足らないと言っているのではありません。
熱意があっても、使える食材がなければどうにもならないことがあります。
味付けの練習だからといって、失敗作を次々と作ってしまうことは店の経営上許されません。
ですから、「まかない」などを通して高級食材の一端に触れながら技術を高めていくのです。
料理人の世界に限らず、技術の習得に関してはよく、「一人前になるまでに10年かかる」とか言いますが、これはすべて経営上の理由が絡んでいるためだと思います。

話がずいぶんそれてしまいました。
ファミレスの調理マニュアルは、そんな世界とは関係なく、料理と言うよりは効率よく組み上げられた作業工程のようなものです。
とは言え、火も使えば油も使いますし、包丁だって使います。
ちゃんと教育しなければ、料理の質の話以前に危険です。
では、修行させるのか?
ファミレスでは、そんなことはしていられません。
何年もかけていたら、一人前になる前に高校生は卒業してしまいます。
ではどうするのか。

ファミレスでは料理を、温度と時間と重さという三つの数値によって管理します。
この料理ごとのスタンダードが記されたものが、マニュアルです。
厨房には、グリル用の大きな鉄板があり、ガス(電気の所もある)で一定の温度になるように加熱調整されています。
その鉄板の上にハンバーグを置き、キッチン用のタイマーで、決められた時間焼けば、誰が焼いても同じ焼き具合になるわけです。
当然、器具が正しい温度を維持するよう適正なメンテナンスは必要ですが。
重さというのは、一食あたりどのくらいの材料を使用するかということです。
料理を感覚ではなく、目に見える数値に分解して説明したのがファミレスのマニュアルです。
これによって、ファミレスは安価な人件費で、一定のレベルの料理を提供できていたわけです。

しかし、最近事情が少し変わってきました。
たとえば、僕の入社当時、キッチンでフライパンを使うのは、付け合わせの野菜を加熱するときと、ステーキを焼くときぐらいでした。
ですから、キッチンにベテランがいないときにステーキのオーダーが入ると、店長が呼ばれたりしていました。
今は違います。
フライパンを使う料理が増え、フライパン自体の種類と数も増えました。
パスタも、フライパンで炒めて具材とソースをからめています。
他にも手間のかかる料理がどんどん増えています。
フライパンで炒めるという調理手順は、温度や時間で数値化しにくい作業です。
盛りつけも、昔はただ平面的に配置するだけという感じでした。
今は立体的な盛りつけをしないと、料理そのものが成立しないようなものもあります。
それに伴って、ウェイトレスが料理を運ぶ際にも以前より注意が必要になっています。
厳しい業界の競争の中で日々新しい料理が開発され、店舗のオペレーションは困難になってきています。
しかし、同業他社との差別化には、そういう努力が必要です。

残念ながら、もうどこの店で食べても同じ料理がでるとは限らなくなってきています。
ファミレスのクックにも、昔から個々の能力の差はありましたが、それが料理の差になって現れることは少なかったのです。
ですから、腕のいい調理スタッフのいる店は出てくる料理もおいしいです。
店長としては、こういうスタッフをなるべく多く育てなければなりません。
店長の仕事で最も重要な教育という仕事が、年々難しいものになってきています。
そんな競争の中で僕たち店長は、自分の店を選んでもらえるように日々努力を続けています。

 過去ログのインデックスへ
 カテゴリ別のインデックスへ
 TOPページへ

|

« 冷凍マグロにばける方法 | トップページ | ただいまココログ冬眠中(夏だけど・・・) »

コメント

(*・ェ・*)ノ~☆コンバンワ♪みゆりんです

そうですね~

ハンバーグは、焼いてオーブンに流せば、誰が作っても同じですが

フライパンを使う物

オムライスとパスタは、本当に作る人によって変わりますよね


マニュアルで定められていても、作る人の愛情次第というか

自分の食事をオーダーする場合、そこに誰が居るかで変わります(ぉぃ

応援ぽっちん♪

投稿: ファミレス・ガスト☆奮闘記!みゆりん | 2006年7月10日 (月) 19:51

みゆりんさん、コメントありがとうございます。
ココログが重くて、時間がかかったのではないでしょうか? 
申し訳ありません。
僕も、食事は人によって頼むものを変えます。
しかし卵料理だけは今でも自分で作ることが多いです。
それは、卵料理に関しては僕にかなうものが誰も店にいないからです
(はい! 自慢です。キッパリ)
卵料理には、入社当時鍛えられたのでこだわりがあります。
たまに、ナマイキナ高校生にプレーンオムレツとかで腕前を披露して、黙らせます。
(なんて、大人げないんでしょうか・・・)
そういうことも、やっておかないと店長は料理できないんじゃないの?
なんて思われてしまうからです。
新人クックに自分の食事で練習させて犠牲になることもありますけど・・・


投稿: ばーど | 2006年7月10日 (月) 22:51


投稿: | 2010年5月 7日 (金) 06:16

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/179348/10870761

この記事へのトラックバック一覧です: ファミレス界の、達人シェフ :

« 冷凍マグロにばける方法 | トップページ | ただいまココログ冬眠中(夏だけど・・・) »