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2006年7月15日 (土)

スーパー・アルバイター PART 2  孤高のリーダー 2

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新しい店長である僕に、自分が苦労して考えた食材レイアウトと、発注予定量を変更された矢口さんは僕を強い視線で見ました。
この時僕は、矢口さんがかなり気が強いことに気がついたのですが、すでに遅すぎました。
そうと分かっていれば、対応の仕方もあったのですが。
矢口さんにすれば、自分がいない2週間の間に色々変更されてしまったので、最初から僕にいい印象は抱いていなかったのです。
「店長、食材の使用量は天気とか温度によって、かなり変わりますよね?」
「それは、そうだけど」
「その、変動はどうするんですか。それに、曜日によって食材をカウントする時間が違いますから、それも考えないといけないと思います」
僕は矢口さんが発注量について、かなり考えていることを知って驚きました。
発注台帳に書き込まれた数字だけで判断した時は、ずいぶんと大ざっぱな決めかたをしているなと思ったのです。
悪く言えば、品切れさえしなければいいという考え方で、在庫は多めにしていると思っていたのです。
しかし、矢口さんは彼女なりに数字に根拠を持っていたようでした。
これは、じっくり彼女と対決しなければならないと僕は覚悟しました。
「矢口さん、この店に今、食材は金額でどれぐらい在庫があると思う?」
少し考えて矢口さんは答えました。

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「70万円ぐらいだと思います」
「よく知っているね、じゃあ、それって何日分の食材だろう」
「1日の売上が50万円として、4日分ぐらいですか・・・」

僕は、本当に驚きました。
矢口さんは、店に在庫がどれぐらい有って、さらにそれが何日分の在庫なのか把握していたのです。
自分の店の、平均売上、在庫金額、さらに原価率まで知っていなければ答えの出せない質問でした。
どうせ答えられないと思って質問したのに、作戦が狂いました。
今キッチンで働いている社員に同じ質問をして、はたしてすぐに答えが返ってくるか疑わしいものです。
「毎日納品があるのに、4日分の在庫があるのはおかしいと思わないかい?」
この言葉には多少のごまかしが入っていたのですが、矢口さんはすぐに気がつきました。
「店長、70万円の中には週3回しか納品がない冷凍食材も入っていますから、毎日納品のあるチルド食材の在庫は4日分も無いと思います。正確には分かりませんけど2日分位じゃないかと思います」
さすがに、在庫の中に占めるチルド食材の比率までは知らなかったようですが、勘が鋭いです。
「確かにそう。チルドだけで計算すれば在庫は2日分ぐらいだね。でも、それでも多いと思う」
「そこまで絞るとなると店長・・・」
矢口さんの心配も僕には分かりました。
今まで、発注は入客の合間を見てやっていました。
基本的にはランチ後のアイドルタイムにやることが多かったのですが、日によってはディナーの後にカウントすることもあったようです。
チルドの納品は深夜から早朝にかけてです。
発注は、翌々日の納品分を決めます。
すでに、翌朝の納品数は決まっているので、その分と合わせて3日後の納品まで保つ数量を発注すればよいのです。
その考え方からいくと、一日の半分以上が過ぎた時点でのカウントで2日分の在庫があるのは、多いと言えるでしょう。
しかし、よりシビアな発注が要求されるので、カウントも正確に行わないとなりません。
「確かに、手間はかかる。でも在庫を減らせば原価率も下がるしロスも減るから、ぜひ協力してほしいんだけど」
矢口さんは、少し考えていましたが、やがて口を開くと、
「私は、アルバイトですから店長がそうしたいというのであれば、従います。でも、細かく発注量の予測もしなければならなくなりますから、負担は増えます。なぜ、そんなに在庫を減らしたいんですか? がんばって減らしただけの効果が現れるんですか?」
そこまで尋ねられれば、僕も説明せざるを得ません。
「まず在庫を減らせば買掛金が減って、ファミリーレストランのように現金商売の場合、財務上のメリットが大きいんだよ」
要するに、仕入れた材料の代金を支払う前に、お客さんから代金が回収できるということです。
さらに、その買掛金の額を減らすことができればさらに効果はあります。
「それに、原価を下げる効果もある。この店は決して原価が低い方じゃないしね。この売上規模なら、あと1%は下がっていいはずだと思う」
「そこが、分からないんです店長。発注しすぎて、最終的にお客さんの口に入る前に賞味期限が過ぎてしまうなら、そうなると思います。でもそうでなければ、ロスも発生しないので原価には関係ないと思います」
まさに矢口さんと同じ疑問を、僕も新入社員の頃に抱いていました。
同じ質問を上司である店長にもしましたが、答えは、
「うるさい、言われたとおりにすればいいんだ!」でした。
しかし、アルバイトの矢口さんを相手にそういうわけにはいきません。
答えは用意してあります。
僕は、矢口さんに説明を始めました。

  PART 3 へつづく

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