« 国道421号、石榑峠の秘密 | トップページ | スーパー・アルバイター PART 11    ランチの女王 3 »

2006年7月31日 (月)

ヘルプ! PART 1

いよいよ8月がやってきます。
ファミレス(ファミリーレストラン)の店長にとって上半期の正念場です。
今年はカレンダーの並びが悪いのですが、それでも11日から15日までは、企業の夏休みで入客が集中すると思われます。
この時期には、自分の店以外のことで頭を悩ませることがあります。
今年も先週の月曜日にSV(スーパーバイザー)から電話がかかってきました。
「佐野君、お盆のスケジュールはどうなっているのかな? ざっと目を通したんだけど細かいところは調整済み?」
実は、その日(7月24日)は、お盆の週のスケジュールを確定させるタイムリミットだったのです。
僕は夏休みに入る前、7月の中頃には一番先にその週のスケジュールを作ってしまいました。
過去にギリギリまでスケジュールができず痛い目にあった経験があるので、とりあえず早めに一度形にしてしまうようにしています。
その為にGWあけから、アルバイトさんたちに対して情報収集と根回しを続けてきたのです。
7月24日のタイムリミットにスケジュールができていないようだと、かなり危険です。
SVはその時点で自分の地区に人員不足の店があれば、フォローする体制を作らなければなりません。
その日のSVの電話の用件は、応援についてでした。
「佐野君、毎度毎度で悪いけど、今年も応援出せるかな?」
応援を出すのはかまわないんですが、一つだけ困ったことがあるのです。

人気blogランキングへ

「SV、応援が必要なのはどこですか?」
「高梨の所なんだよ、あいつ俺があれほどお盆のスケジュールを早く作れと言っていたのに、まだ14、15日のスケジュールができていないんだよ。他から応援を引っ張ってこなきゃ回らないのは分かっていたから、不完全でもいいからとりあえず作ってしまえと言っていたのに」
SVとしては、高梨君の店が人員不足なのは最初から分かっていました。
しかし他の店から応援を出すにしても、どこが人員不足なのか分からなければ手配ができません。
その為に不完全でもいいから形になったスケジュールが早く必要だったのです。
「必要なのは、14、15日ですか?」
僕は意外に思いました。
高梨君の店の近くで夏祭りのイベントがあるのは、12、13日の土日だと聞いていました。
ですから、一番きついその二日間に応援を出せるように自分の店のスケジュールを作っていました。
「そうなんだよ、あいつも不器用だから12日と13日の二日間のスケジュールを作ることばかり考えすぎて、逆にその後が苦しくなっているんだよ」
ワーキング・スケジュールは1週間単位で作成します。
月曜日から始まって日曜日で終わる、7日単位のスケジュールを作るわけです。
SVの話によると、高梨店長は12日と13日の夏祭りのをしのぐことを考えすぎて、そこに人員を総動員したスケジュールを作ってしまったらしいのです。
通常であれば、土日にスケジュールを集中させても、次の日は月曜日で平日ですから問題ありません。
しかし、月曜日が祭日だったり、お盆のように連休が続く場合はそれを考慮しなければなりません。
アルバイトさんのスケジュールは、週に最高5日出勤で作成します。
店長は一人の人間が連続して出勤して疲れが溜まったりしないように、バランスを考えて作成する必要があります。
高梨店長の場合、12、13日までに、主力メンバーを連続出勤で働かせるスケジュールを作ってしまったので、その後の14、15日に休ませなければならなくなってしまったというわけです。
結果的に、お盆の連休後半に人員が足らなくなってしまったのです。
アルバイトさんに連続出勤を我慢してもらったとしても、また別の問題があります。
前の週(8月7日~13日)はお盆の休暇と土日が重なっていましたから、1週間のうち休日パターンでスケジュールを組まなければならないのは2日だけです。
しかし次の週(8月14日~20日)は、14、15日のお盆休みに加え通常の土日もあるので、1週間のうち4日間を休日パターンで組まなければなりません。
一人一人は週に5日以上働かせないという制約もあるので、14日、15日に人員を投入しすぎると、今度は土日に働く人間がいなくなってしまいます。
そういうことを考えれば、2週間分のスケジュールをまとめて考えて作らないと、バランスのとれたスケジュールは作れないのです。
しかしスケジュール作成は、ある種パズルのようなものなので、一度に考える日数が多くなればなるほど難しくなります。
ジグソーパズルのピース数が増えるようなものです。
高梨店長は、この春店長になったばかりなのでその点経験不足でした。
「分かりましたSV。具体的な時間と人数はどのくらい必要ですか?」
「14日は朝一の6時からランチが終わるまでが一人。ランチピークの11時から15時まででいいからもう一人。ディナーは一人出せるならほしいけど、それより深夜が全くいないから、朝まで働ける人間を何とか出してほしい。それが出せるならディナーは他の店から引っ張ってくるよ。15日は、12時から21時で一人。あとやはり深夜から朝まで働ける人間を一人出してほしい」
12、13日に応援を出すことを想定してスケジュールを組んでいたのでこれは厳しい要求でした。
しかし、困っているときはお互い様なので助け合わなければなりません。
「分かりましたSV、何とかします。スケジュールを調整して今日中に連絡します」
「ありがとう助かるよ。ところでランチは誰を出せそうかな? できれば八木さんがいいな」
ついに恐れていた言葉がSVの口から出ました。
SVは応援を頼むときにしばしばアルバイトを指名するのです。
そしてそれは例外なく、リーダークラスの主力メンバーです。
店長として最も出したくない人間を指名してきます。
八木さんは、接客に関しては僕の店のアルバイトの中でNo1です。
僕はささやかな抵抗を試みました。
「いや、その日は八木さんを出すことは考えていなかったので・・・ 社員の斉藤はどうですか? やつならキッチンでも接客でも使えますから使い勝手がいいですよ。多少残業させたってかまわないですから」
「だめだよ斉藤の接客なんて。八木さんと比べれば天と地ほども差があるじゃないか・・・」
そんなことは分かっています・・・
だから僕も出したくないのです。
さらにSVは続けました。
「それに、高梨のとこの頼りないリーダーと一緒に仕事をさせて、見本を見せてやってほしいんだよ」
どうやら八木さんを応援に出すことに抵抗はできそうもありませんが、新たな心配が出てきました。
八木さんは確かに接客態度抜群で、お客さんからも人気があります。
しかし、その反面仕事に関しては自分にも厳しく、他人にも厳しいのです。
SVが教育もかねて応援に出させるつもりでいるとしたら、むこうで揉めるのは目に見えています。
八木さんは、自分の店でないからといって遠慮はしないと思われるからです。
応援先のリーダーとの衝突は必至です。
「SV、この時期に教育なんて、それは避けた方がいいんではないでしょうか?」
「何言ってんだよ。だったら、平常時に教育のために八木さんを出してくれるのかよ? こんな時でないとチャンスはないんだから」
確かに、他店の教育のために応援を出すのは勘弁してもらいたいところです。
「分かりました、スケジュールはもう出してあるので、交渉してみます」
そう言って、僕は電話を切りました。

その日僕は出勤してきた八木さんに、応援のことを切り出しました。
しかし、八木さんは少し考えていましたが、やがて顔を上げると僕に言いました。
「店長、この店のことなら私は何でもやります。でもこの一番忙しい時期に他の店に行くなんて、納得できません。応援は、お正月にも行きましたけどもうこりごりです」
はっきりと拒絶されてしまいましたが、八木さんは社員ではないので強制するわけにはいきません。
しかし、なぜ、八木さんは他店に応援に行くのをこんなにいやがるのか・・・

  PART 2 につづく

 過去ログのインデックスへ
 カテゴリ別のインデックスへ
 TOPページへ

|

« 国道421号、石榑峠の秘密 | トップページ | スーパー・アルバイター PART 11    ランチの女王 3 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/179348/11167391

この記事へのトラックバック一覧です: ヘルプ! PART 1:

« 国道421号、石榑峠の秘密 | トップページ | スーパー・アルバイター PART 11    ランチの女王 3 »