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2006年7月29日 (土)

スーパー・アルバイター PART 10    ランチの女王 2

  PART 1から読むにはこちらへ

「どちらにしても途中で食材が切れるのは困ります」
食材のプリパレ量(前準備する量)を減らせば、負担も軽くなってうまくいくのではないかという僕の提案に対して、堀田さんは反射的に拒絶反応を示しました、
そこで僕は堀田さんに、数枚のグラフを見せました。
それは1時間ごとのメニュー数からキャベツスライスの使用量を計算してグラフにしたものでした。
「ここ2週間のデータですが、プリパレした3kgのキャベツスライスが13時までに切れる日は1日もありません。14時までに使い切ってしまう日は2日でした」
つまり3kgのプリパレ量で、14時まで保たない日は1週間に1回だけということです。
14時まで保てば通常午後のプリパレを始める時間ですので、切れたとしても問題はありません。
問題なのは、14時前に切れてしまった場合ですが・・・
「店長お話はよく分かりました。でも14時まで保たないことはあり得るわけで、その時は途中でプリパレをやらなければならなくなります。そうなると、午後の仕事の割り振りがうまくいきません」
確かに堀田さんの言うこともよく分かります。
しかし僕はここで譲るわけにはいきません。

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キッチンではランチピークが終わると、午後のプリパレ、解凍作業などを行わなければなりません。
解凍作業というのは、冷凍食材を翌日の使用量に合わせて冷凍庫から冷蔵庫に移し、24時間かけて使用できるようにすることです。
その他にも、フライヤーの油を交換あるいは、漉す作業も行います。
あわせて各人の午後の休憩も回します。
その段取りがくるってしまうと、堀田さんは言うのです。
堀田さんは、ランチのキッチンのリーダーですから仕事が順調に進行するように管理しなければなりません。
一番楽なのは、毎日同じ時間に同じように作業を進めることです。
失礼な言い方をすれば、何も考えなくても毎日同じように仕事を進めていればいいということです。
その為には、イレギュラーなことが起こってはまずいのです。
途中で食材が切れて、その場で追加のプリパレをすることになれば、その後の仕事や休憩回しの優先順位などを調整しなければなりません。
そういうわけで、キッチンとしてはプリパレ量を多めにしたいのです。
本人たちは、キッチンのオペレーションを円滑に進めるために良かれと思ってやっていることなので、一概に責めるわけにはいきません。
しかし放っておくと、月に何度もないような最大使用量に合わせてプリパレするようになってしまいます。

「堀田さん、僕は一度深夜の武内君と一緒に仕事をしてみたんですが、彼が何時頃プリパレをやっているか知っていますか? 朝4時をすぎると納品が来たり、自分の朝の仕事の準備をしなければならないので、3時頃なんですよ」
「はい、知っています」
堀田さんは、あまりそのことには触れられたくないという表情でうなずきました。
「おかしいと思いませんか? 朝3時にカットされた野菜を9時間後にランチタイムのお客さんが食べるんです。しかも、その野菜は当日納品されたものではなく、前日のものです。なるべく新しいものを、そして手を加えてからなるべく短時間のうちに、お客さんに出すのがレストランの使命じゃないですか」
「それはそうですけど、この店にも長年の間に作られてきた仕事の進め方というものがあります。発注の精度を上げるのはすばらしいことだと思いますが、それに引きずられて、すべての作業の組み立てを一気に変えられては困るんです」
「では、なるべく当日に納品されたものをお客さんに提供したいという僕の考え。そして、加工してから短い時間で提供していこうという考えは理解していただけますか?」
堀田さんは、少し考えるようにしていましたが、やがて自分の考えを素直に語ってくれました。
「店長のお気持ちはよく分かります、私たちだってそうしたいという気持ちはあります。でも、時間内に必ず終わらせなくてはいけない仕事もたくさんあるんです。いまは、時間外の残業はしないようにとの指示も出ていますから、どうしても効率よく仕事を進めなくてはならないんです」
確かに人件費削減のため、スケジュール外の残業はしないようにとの本部からの指示が出ています。
ファミレス(ファミリーレストラン)では、年々一店あたりの売り上げ規模が下がってきています。
ここ数年、ようやく下げ止まったかという感はありますが、人件費を取り巻く環境は厳しくなっています。
一年前より人員を減らされて、一人一人の負担は増えています。
そのたびに、彼女たちなりに工夫をして現在の仕事の段取りを作り上げてきたのです。
それを、異動してきて一ヶ月足らずの店長に根こそぎひっくり返されたんではたまらない。
それが、偽らざる本心というところでしょう。
僕は、堀田さんの本音が出てきたところで、前もって用意してあった一つの提案をしました。
「堀田さん、僕は何もランチタイムのキッチンの皆さんだけに、泣いてくれというつもりはありません。それについては僕に考えがあります。ランチの皆さんの負担を少し軽くして差し上げます」
僕が用意した、ランチタイムのキッチンメンバーを納得させる提案とは・・・

  PART 11 につづく

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コメント

すごい気になるじゃないですか!

どんな提案ですか?

楽しみにまってます。

投稿: 札幌ひとりくらしブログ | 2006年7月29日 (土) 23:05

オートサーフで来ました。

オートサーフで掲載されているブログは
私利私欲の事しか書いていないブログが
多いと思っていましたが、これは普通に
楽しめました。

どんな提案なんでしょう?気になります!

どこのレストランなんだろうなァ( ´ー`)y-~~

投稿: シロイルカ | 2006年7月30日 (日) 08:49

札幌ひとりぐらしブログさん、コメントありがとうございます。
提案については、PART 11 で書く予定です。
ご期待にそえるかどうか・・・

投稿: ばーど | 2006年7月30日 (日) 22:12

シロイルカさん、コメントありがとうございます。
どこの、レストランかは考えないでください。
会社には内緒なので・・・
そうでないと書きたいことが書けなくなってしまいます。
ですから友人知人にも、このブログのことはほとんど知らせていません。
といって呼んでもらえる人がいないと寂しいので、オートサーフに出しています。

投稿: ばーど | 2006年7月30日 (日) 22:17

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