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2006年6月20日 (火)

受水槽の番人

僕が店長に成り立ての頃、ちょっとした事故が起こりました。
僕が、店長室で会議の書類を作っていた時です。
スケジュールは12時からだったのですが、そのために9時から出社していました。
10時をすぎた頃でした、キッチンの桜井さんが駆け込んできました。
「店長、水が出ません! 急に勢いが弱くなって止まっちゃいました・・・」
いつもは冷静な桜井さんですが、今は一刻も早くランチの準備を済ませなければならない時間です。
水道が出なくては、仕事になりません。
「店長、何とかしてください」
僕は立ち上がると、バックヤードの配電盤に向かいました。
店内の照明は落ちていないので、電気は大丈夫なようです。
配電盤の大きな扉を開けると、ブレーカースイッチがずらりと並んでいます。
その数は、ざっと50個ほど。
その中の、給水ポンプのところを確認します。
そのスイッチは、落ちていませんでした。
店内の水は、上水道からの圧力ではなく、店舗の給水ポンプで加圧して配水しています。
電源が落ちていないと言うことは、ポンプの故障か?
僕は、外に出て店の駐車場裏手にある、受水槽の方に向かいました。
そこには、

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高さ2m、幅3mほどの受水槽があります。
上水道から送られてきた水は、一度このタンクの中に貯められ、給水加圧ポンプによって店内に送られるのです。
しかし、加圧ポンプの故障で水が止まることは、ほとんどありません。
何故かというと、
給水加圧ポンプは2系統あるからです。
1台が故障しても、もう1台がすぐにバックアップします。
2台とも同時に故障することは考えられません。
僕は、ポンプのパイロットランプを確認しました。
異常はないようです。
ポンプの入れ替えスイッチで、2台のポンプを交互に作動させてみましたが、どちらも正常のようです。
断水の連絡などは受けていないし、ポンプも正常です。
こんな時、店長としては考えなくてはならないことがあります。
営業を、続けるかどうかです。
水が止まったままの状態では、営業はできません。
業者に修理を手配するにしても、すぐには復帰できません。

僕は、頭の中を整理しました。
すぐに、連絡しなければならないところは、6件。
まずコールセンターに修理依頼をする。
次にSV(スーパーバイザー)に営業続行できないことを連絡し、閉店の許可を得なくてはなりません。
店長には、最終的に閉店を決定する権限はありません。(緊急の場合は除く)
営業時間というのは、ナショナルチェーンとして死守しなければならない重要事項です。
そこが揺らぐと、お客様の信頼は得られないからです。
開いていると思ってきたのに、開いていなかったでは済まされません。
それから、12時に5名で予約を受けているお客様のところに、一刻も早く事情を説明してお詫びしなければなりません。
最後に、この後11時に出勤してくる3名の予定の従業員に閉店の連絡をして、出勤を見合わせてもらわなければなりません。

僕は、こういうことを予測して持ってきていた、電話の子機を取り上げコールセンターに電話しました。
これで、少なくとも今日のランチの売り上げはゼロです。
失った売り上げは、二度と帰ってきません。
僕は、目の前にある大きな受水槽の横腹を拳で叩きました。
すると・・・
〝コーーン〟という、軽い音が響きました。
何? この中は10t近い水道水で満たされているはずなのに、この軽い音はどうしたんだろう?
僕は、受水槽点検用のはしごを登り、上部にある点検用の窓を開けました。
すると、内部には底の方にわずかに水があるだけでした。
受水槽内は水道が止まらない限り、常に一定量以上の水量を保つように、自動的に補充される仕組みになっているはずです。
しかし、水は全くありません。
ということは、水を自動的に補充する仕組みが故障したのかもしれない。
そう思いましたが、どういう仕組みなのか僕は知りませんでした。空っぽの受水槽の中を見ると、20cm角ぐらいの白いポリタンクのようなものが、内壁から水平に支えられた長さ50cm程のポールで、点検窓のすぐそばの空中に保持されていました。
何だろう、これは。
僕が軽くつつくと、軽くきしむような音とともにポリタンクのようなものは下方に落ちていきました。
ポールは、固定されていたのではなく可動式だったらしい。
そう思った時です。
〝ドドッー〝 という音とともに、勢いよく水が受水槽内に流れ込み出しました。
どうやらそのポリタンクは、受水槽内の水位を測る為のフロートだったらしいです。
水位が下がり、それとともにポリタンクが沈み、ポールの角度が一定以下になるまで水位が下がると、水栓が開き水が補充される。
そういう仕組みのようでした。
水洗トイレのタンクの中の仕組みとまったく同じです。
今回はそのポールの可動部分がさび付いてしまい、水位が下がったのに水が補充されず、ついに受水槽が空になってしまった為、水が止まったのだと分かりました。
いや、それにしても原始的な仕組みだなぁ、そう思った僕はこれで閉店せずにすむと安心しました。

水と電気とガスは、どれがストップしてもアウトです。
営業はできません。
しかし不幸にも僕は、いきなりガスが止まってしまうという経験もしています。
まだ、副店長の頃でしたが・・・

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