« オーダービンゴ、日本代表とそれぞれの日曜日・・・ | トップページ | 受水槽の番人 »

2006年6月19日 (月)

ファミレスの夏休み

そろそろ6月も後半です。
今ぐらいの時期になると、高校生アルバイトの中に退職していく人が出てきます。
多くは受験の為というのが理由です。
高校3年生の夏ともなれば、推薦で進学できる人を除けば勉強に本腰を入れなければならない時期です。
しかし、店長とすれば夏休みをひかえて人員の確保に留意しなければならない時期でもあります。
8月は年間を通して最も売り上げの高い月です。
しかも10日前後から~15日前後までは、企業の夏休みの影響で売り上げが集中します。
店長は、年末年始、ゴールデンウィーク、夏休み、この3つの繁忙期と、平常時のどちらにも対応できるように人員をそろえなくてはなりません。
一店あたりの売り上げが低くなった現在これが難しいです。
忙しい時に合わせて人員を採用すれば、繁忙期が終わった後には人員過剰となります。
そうすると思ったようにスケジュールを入れてもらえず、より稼げる職場へ移っていく人が出てきます。
しかも、そういう時には能力の高い人間、店に取って重要な人間から先に去っていきます。
何としても、そういう事態は防がなくてはなりません。
僕が、スケジュールを作っていると高校生アルバイトの安東さんが店長室に入ってきました。
「店長、お話があるんですけど・・・」

人気blogランキングへ

僕は、まずいと思いました。
安東さんは、現在高3です。
1年生の時に採用して既に2年たち、今では高校生アルバイトの中核を占める重要メンバーです。
ここで彼女に抜けられるのは非常に、痛いです。
僕はスケジュール作成の手を休め、安東さんの方を見ました。
「どうしたの? スケジュールの希望かな」
僕は先制攻撃で、カマをかけてみました。
「実は、そうなんです」
やっぱりそうか、この時期に話があるといわれると、たいていアルバイトを辞めたいという話か、週一ぐらいにスケジュールを減らしてほしいという話です。
「実は、スケジュールを増やしてほしいんです」
えっ、何だって。
予想外の展開です。
「実は、推薦が決まったんです。それで、大学に入ったら留学したいのでお金が必要なんです。店長、お願いします!」
「そうか、おめでとう。分かったよ、いやこの時期ありがたいなぁ、助かるよ。何か、スケジュールに希望があったら言ってよ、考えるから」
僕は、つい安請け合いをしてしましました。
すると、安東さんは言いました。
「じゃぁ、7月の第3土曜日は休みにしてくださいね。お願いシマス」
そういうと、安東さんは足早に仕事に戻っていきました。
僕は、アルバイト一人一人のスケジュール希望を記入するフォームの安東さんのところに、彼女の希望を書き入れ・・・
何? ちょっと待てよ。
第3土曜は、年に一度の花火大会の日じゃないか!
その日は、店から1キロほど離れた河原で花火大会が行われます。19時から始まる花火大会は21時前に終了するのですがその直後、店は満席ウェイティングになります。
浴衣姿の若者や、ファミリー客で店内は埋め尽くされます。
その日一日の売り上げは、花火開催中が激ヒマになるので、トータルではそれほどでもありません。
しかし、花火終了からの2時間ほどは、おそらく年間を通して最も過酷なピークが待っています。
花火開催中の、ほとんど空席状態から一気に満席になり、その後も入りきれないお客さんが店外まで並びます。
うーん、そこに安東さんがいないのは苦しい。
しかし、地元の高校生にとって花火大会は大事なイベントです。
安東さんは、1年生の時も2年生の時も高校生が働けるぎりぎりの時間である22時まで働いてもらいました。
今年くらいは、行かせてあげるか・・・
僕は来週には、夏休みのスケジュールを作り始めないといけないなあと思いました。
ファミレスの夏は、一足早くやってきます。

そんなことを考えていると、やはり高3になるアルバイトの近藤さんがやって来ました。
「店長、話があるんですけど」
「何だい、まさか受験するからアルバイトを辞めたいなんて言うんじゃないだろうな」
近藤さんは、こう言っては何ですが勉強嫌いで有名で高校の成績も超低空飛行です。
高校を留年することはあり得るとしても、間違っても大学進学なんて言い出さないと思っていました。
「違いますよ、そうじゃなくて・・・」
「あっ、花火大会の日はだめだよ、君は去年も、一昨年も出てないんだから。今年は絶対出てもらうから」
「違いますよ店長! がんがん入れてください。彼氏とも別れたし、花火大会なんてどうでもいいです。それと高校も辞めちゃったんで明日からフリーターです。どんどん働きますから、よろしく」
あっけにとられる僕を残して、近藤さんもまた、足早に去っていきました。
やれやれ、高校を中退したというのに、あの明るさはどんなものだろう。
スケジュール作成に融通が利くようになったことを、喜んでいいのか考えているうちに時間は過ぎてゆきました。

 過去ログのインデックスへ
 カテゴリ別のインデックスへ
 TOPページへ

|

« オーダービンゴ、日本代表とそれぞれの日曜日・・・ | トップページ | 受水槽の番人 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/179348/10592880

この記事へのトラックバック一覧です: ファミレスの夏休み:

« オーダービンゴ、日本代表とそれぞれの日曜日・・・ | トップページ | 受水槽の番人 »