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2006年5月14日 (日)

「泣いて馬謖を斬る」VS「後は野となれ山となれ」

  ファミレス店長の敗者復活戦、全記録 Vol.005

さて前回、地区の〝サービス重点店舗〟に指名され、そのテーマを「新リーダー制度」にすることを了承してしまった長沢店長ですが、彼にも事情がありました。
Vol.3でも紹介しましたが、店にはそれぞれの立地によって越えられない限界があります。
営業努力の不足のために売り上げが芳しくないのであれば、改善の余地もあります。
しかし周りの環境の変化、たとえば周辺のショッピングセンターやレジャー施設の撤退等による、キャパシティの低下には抵抗できない場合もあります。
また、前任の店長が売り上げを目一杯上げた後だと、後任の店長は非常に苦しい状況になります。
だいたい店長は、3年前後で替わっていきます。
1年目で基礎を固めて、2年目で実績を上げていき、3年目でその成果を回収する。
そして、その実績をもとにステップアップして、より売り上げの高い店に異動していくことを考えます。
しかし、その後に残った店が問題です。

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3年以上のスパンで、店舗運営を考える店長はあまりいません。
成績が良いにしろ悪いにしろ、4年目も同じ店にいることはないのが分かっているからです。
ここが個人経営のレストランと違うところです。
後任の店長のことを考えてやらないのかと思われるでしょうが、そもそもファミレスにとって一番大事な、パート、アルバイトは店長が替わると1年ほどで半分以上が入れ替わります。
店長は、ある種の人気商売みたいなもので、店長が替わるとそりの合わない人間は辞めていくことも多いのです。
また新人として採用した学生も、3年たつと卒業して進学や就職のため旅立っていきます。
本来ならば1年目に自分で採用して手塩にかけて育てた人間のスケジュールを、3年目には削ってでも、新人を採用して次年度のために育てていかないといけないのです。
しかし、新人の教育には経費がかかります。
既存の能力の高い人間でスケジュールを固めていけば、人件費は抑えることができ、利益も上がります。
そうして、2,3年目で利益を上げて自分の評価を高めるための実績を積み上げていきたいのが本音なのです。
しかし将来のことを考えて新人を多く入れれば、その分人件費がかさみます。
ベテランばかりならば4人ですむところも、新人を入れれば5人投入せざるを得ないことも考えられます。
そういう事情を含みながら、店長の人事は流れていきます。

長沢店長の場合、前任の店長は非常に優秀な人間で赴任以来2年間で、多少傾きつつあった店を建て直して、すでに成果を上げていました。
そして、その能力を買われて新しくオープンする店の店長として異動していきました。
その店が、前回お話しした雨宮SVのもとで開店以来絶好調の実績を続けている新店なのです。
その店長は、原島と言います。
原島店長は、中規模店の立て直しで実績を上げ、さらに新店のオープンも成功させました。
次期は、大型店舗の店長候補としてすでに名前が挙がっています。
そこに異動してきた長沢店長は、利益至上主義のスケジュールを組むことも可能でしたが、彼の場合来年もこの店にいるわけですから、そういうわけにもいきません。
新人を今から育てていかないと、なまじ売り上げが上がっているだけに来年は悲惨なことになってしまいます。
店には、原島店長が育てた大学生のアルバイトリーダーがホールに二人、キッチンに二人いました。
この4人のリーダーをフルに活用して原島店長は店を運営していたのです。
原島店長は、SVのいないところではこんなことを言っていました。
「人事の採用した訳の分からない新入社員より、奴らの方が百倍頼りになる」
彼らは幸い、今後もこの店で変わりなく働いてくれることを約束してくれていましたが、来年は4年生になるため就職活動のためほとんど稼働できないことが分かっています。
このまま、彼らに頼ったスケジュール運営では未来がないことは分かっていました。
しかし、高校生のアルバイトにも信頼の厚い彼らを切ることは長沢店長には、なかなかできませんでした。
その辺の事情を汲んで、雨宮SVが〝新リーダー制度〟を重点項目にしようと言ったのなら、それは部下思いの良い上司だったでしょう。
なぜなら、〝新リーダー制度〟は、なかなか育成の難しいアルバイトのリーダーさんを育てるための、人事面からの優遇制度のことだったからです。
具体的には、将来のリーダー候補を、時給その他の面で最初から優遇して積極的に採用し、育てていこうというものでした。
運用しだいでは店長にとって強力な武器になりますが、一度使い方を誤ると非常に危険な、まさに両刃の剣でした。

長沢店長はこの危険な選択をしてしまったのでした。

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